独りぼっちの誕生日
「はぁ〜、また一つ歳とってもうたわ…」
今日11月3日はウチの誕生日や…。ウチも30代前半の折り返し地点。今年で35になる。と言うことはあの子が天国へ旅立ってからもう7年も立つんやな…。居候はどこで何をやってんねんか知らんけど、ここへは帰って来んかった。まあ、あの居候のこっちゃ、どっかでまたあの小汚い人形でも使うてウケもせん人形劇でもやってんねんやろう。そう思う。
あの子の部屋はそのままや…。7回忌も終わって、そろそろ踏ん切りつけて片付けよう思てんけど…。あの子と暮らしたあの部屋を、あの子がおったあの部屋を片付けることなんて出来へん。そう思てそのままや…。もちろんたまには掃除もする。あの子が座っとった机の上には今でもトランプが置いてある。あの子が大好きやった恐竜柄のトランプは生前ウチが買うてきてやったやつや…。
「なあ、観鈴。あんた今でも“がお…”って言うてんのか?」
にかっと笑いながら独り言のようにそう言うウチ。机に手を置きぽんぽんと軽く叩く。あの子がおったらなんて言うやろう……。そうや、あの可愛い笑顔できっと、
“お母さん、お誕生日おめでとう。にはは…”
って言うんやろうなぁ〜。はぁ〜っとため息を吐くウチ。“あ、あかんあかん。しっかりせなな?…。あんたに笑われてまう” なあ? ウチの可愛い観鈴ちん……。机の上の写真に向かい心の中でそう言うた。
一人の朝食。朝は食わんと出て行くことが多いウチやけど、たまには食べてく。って言っても食パンとコーヒーだけやけどな? そういや、新聞取ってくるん忘れとったな? そう思うて表の新聞受けにを見に行った。あっちゃぁ〜。最近保育園の仕事が忙しゅ〜て全然新聞受け見とらんかったから、広告が山のようにあるで〜。ふぅ〜っとため息を吐くと慎重に広告いっぱいの新聞を取る。と、新聞の脇から封筒がひらひら落ちた。何やぁ〜。またどこぞの怪しい勧誘かいな? そう思うて拾い上げる。封筒を見ると見知ったやつの名前が書いてあった。またか…。敬介のヤツ……。ふぅ〜っとまた大きなため息を吐くと家の中に入った。入ってすぐウチは封筒をびりびりに破いてゴミ箱にほかした。…多分封筒にはこう書かれてあるんやろう…。
“君も一人で大変だろう。良かったら僕と一緒にならないか?”
ってな?…。余計なお世話やっちゅうねん。ウチは一人で生きていく。あの子と過ごした日々を思い出に生きていくんや。ゴミ箱にほかした封筒はこれで30回目…。まあ、ようもあれだけクサイ台詞が書けたもんやわと思わず苦笑いしてもうた。
「ほな今日もバリバリいくで〜!! 見守っててや? 観鈴…」
そう小さく言うてドゥガディーに跨るウチ。メットを被りエンジンをかける。ブルンブルンと今日も快調や。さあて、今日も一つ頑張ろかい。そう思うて空を見る。澄んだ青い空に鳥が1羽、気持ちよさそうに空の風に舞っていた…。
END