佳乃の一日アルバイト
「う〜ん。困ったなぁ〜」
あたしは今、猛烈に困っていた。と言うのも、今日1月3日はお姉ちゃんのお誕生日。でもあたしに残されたお金は…、ごそごそと探して見つけた100円玉が2枚に10円玉が3枚…。しめて230円。あたしの今持ってるお金全財産。はぁ〜。これじゃショートケーキ1個ぐらいしか買えないよぉ〜。困ったよぉ〜。お正月にお姉ちゃんと往人君と一緒に初詣に近くの神社に行ったんだけど…、そこでお金を使っちゃったのがそもそもの原因。で、今あたしは机の上にお金を並べてう〜んて唸ってるの…。お姉ちゃんにはこの間お年玉をもらったばかりだし…。そもそもお姉ちゃんの誕生日にお姉ちゃんからお小遣いをもらうなんておかしいし…。
往人君はあてにならないしなぁ〜。と、ぽかっと頭を軽く叩かれる。突然のことできょろきょろ辺りを見回してみるけど全く分からない。あれぇ〜? どうしたのかなぁ〜? って思ってると後ろから声が聞こえたんだよぉ〜。
「俺があてにならんとはどう言うことだ!」
って往人君いたの〜? って言うことは今までの話全部聞いちゃってるよね? そう恐る恐る聞くとびっと親指を立てる往人君。その後あたしが頭をグリグリされたのは言うまでもない事実だよぉ〜。うぅ〜…。お姉ちゃんに言いつけてやろうかとも思ったんだけど、そうするとあたしの計画もばれちゃうから何も言えない。結局、なされるがままグリグリされるあたしがいたんだよぉ〜。
「うぅ〜、まだ頭が痛いよぉ〜。もう、往人君のバカぁ〜!!」
グリグリされた頭をさすりながらぐぐぐっと往人君の顔を睨む。でも往人君は“お前が睨んでも怖くもなんともないしな? って言うか可愛いし…” って言う。途端にあたしのほっぺは赤くなる。怒ってたのも忘れちゃうくらいににこにこ顔になっちゃうから不思議だよぉ〜。
「で? 何をうんうん考え込んでたんだ?」
自販機の前でホットコーヒーを飲みながら往人君はそう尋ねてくる。ちなみにコーヒー代は往人君の驕り。観鈴ちんに紹介されたリサイクルショップで働きながらお姉ちゃんのお手伝いをしている往人君。結構お金も貯まってきてるみたいだけど、お金の管理はお姉ちゃんに強制的に管理されてるからそんなにはないと思う。でもあたしよりはすっごくお金持ちなのは確かなんだよぉ〜? だってコーヒーを買う時に往人君の財布の中をちらっと見たら、諭吉さんや一葉さんや英世さんが入ってたんだからね? それに比べてあたしは…。はぁ〜って大きなため息。……とそこでいいことを思いついちゃうあたし。早速往人君に言ってみる。すると、
「まあいいんじゃないか? 人手不足だってこの前から言ってるしな…。よし、善は急げだ。行くぞ、佳乃」
そう言って往人君はあたしの手を取って歩き出したんだ。お姉ちゃんのびっくりした顔が目に浮かんでくるよ〜。うふふっ。
「佳乃〜。お昼だぞ〜」
そう言うと私は今日のメニューの釜揚げうどんをでんと置く。おせちもあることはあるのだが、佳乃が“おせちばかり飽き飽きだよぉ〜”と言うものだから、うどんにしてやった。ホカホカと湯気を上げているうどん。でも佳乃はなかなか現れない。ふぅ〜、また国崎君とどこかに行ってるんだろう…。そう思い一人うどんを啜る。一人で食べるにはちょっと多すぎたか…。そう考えて一人用に椀に盛るとあとはラップを被せる。私の手作りだからそうそう伸びることもないだろうしな。それにあの大食漢の国崎君も一緒だからまずもって残らんだろう。普段馬車馬のようにこき使っている国崎君。彼がこの町に来て何年になるのだろうか…。と一瞬考えて馬鹿馬鹿しいと思い直して考えるのをやめた。彼はもうこの町の人間だ。そう思う。
と診療所のカレンダーを見て今日が自分の誕生日であることに気づく。そう言えば昨日佳乃が自室でう〜んう〜んと唸っていたことを思い出した。はは〜ん。そう言うことか…。ふふふと微笑むと、私は後片づけをして、午後の診療へと向かった。
「はいこれ。今日のお給金。それと…、院長先生の妹さんには頑張ってお手伝いしてくれたお礼に、お年玉…。まあ少ないけどね?」
と俺に日当と佳乃にお年玉袋を手渡すリサイクルショップの店主。早速お年玉である金を袋から取り出した佳乃は目を丸くしている。“どうした? 佳乃” そう言って俺は佳乃の手を見ると…。俺よか遥かに大きい数字の札が入っていた。不公平だ! とは思うが実際佳乃は一生懸命頑張っていたし、それに今日は3元日の3日目で、しかも俺の今の居候先の主人の誕生日と言うこともあってか何となく言う気が失せる。
「往人君、往人君!! これ。こんなにもらっちゃった。えへへっ」
「そりゃよかったな?」
帰り道、夕暮れの道を歩きながら俺はイヤミったらしくそう言う。が、佳乃はそんな俺の言葉なんて聞いちゃいない。もう何を買おうかと思案中だ。“…で? もう買うものは決めてるのか? 何だったら付き合ってやるぞ?” と言うと、“ほんとに? やった〜。じゃあ早く行こ! 往人君!” そう言って俺の手を引きながら満面の笑みを浮かべてバス停ほほうに向かう佳乃…。大型商業施設は隣町にあるのでこっちに買い物に来る客は多い。おかげでこっちは寂れた田舎町の様相を呈しているんだけどな? まあ、それでもこの町が大好きな連中も多くいるらしく、初詣のときなんかはこんなに来るのかと言うくらい多かった。それだけこの町の好きな連中が多いんだろう。って俺もか…。そう思いながら、佳乃の後をついていく今日1月3日は俺の居候先の主人・霧島聖の誕生日だ…。
END