ポテトのプレゼント


「佳乃ちゃん、お誕生日おめでとう。これわたしからのプレゼント。喜んでくれるとうれしいな? にはは」
「これは私とみちるからのプレゼントです。霧島さん、お誕生日おめでとうございます。ぱちぱちぱち……」
 今日6月12日は、一応ボクの飼い主になるのかな? そこのところはよく分からないけど、霧島佳乃ちゃんのお誕生日だ。帰りしな、いつものように散歩してるとボクの住処になってるお庭の主人の晴子さんの娘で佳乃ちゃんのお友達の観鈴ちゃんと、夏になるとボクと遊んでくれるみちるちゃんのお姉ちゃんの美凪ちゃんが佳乃ちゃんにプレゼントを渡していた。かく言うボクのほうも何かプレゼントをしなくちゃって思って一応は用意してるんだけど…。でも気に入ってくれるかどうか心配なんだけどなぁ〜。
 観鈴ちゃんちの友達のカラス、そらに聞いた話だと女の子はキラキラ輝くものがいいんだ〜って話だったから昨日みんなに内緒で海岸に行ってあれやこれや探し回ってきれいな巻き貝を見つけたんだけど。貝と言っても貝殻で中の貝はなかったんだけどね? 割かし大きかったからズリズリ引いて帰っていつもの寝床に着いた頃には傘のかぶったお月様がぼんやりと街を照らしてるような時間だったんだ。で、問題はどうやってプレゼントを渡すかだけど…。昔何かの用事で佳乃ちゃんのお姉ちゃんと違う町に行ったときに出会ったおじいちゃん犬の話を思い出すボク。話の内容を思い出しつつ早速作業に入って終わる頃にはお月様が西に傾くような時間だった。
 で、今日プレゼントを渡すために散歩に格好つけて渡そうかなぁ〜なんて考えてるんだけど……。生憎の雨。でもそんなに大降りに降ってないからいつも通り散歩に行く。佳乃ちゃんはと言うと一緒に住んでる往人くんにでもプレゼントを貰ったのかにこにこ顔だ。でも、ボクのプレゼントのほうが凄いんだからねぇ〜。尻尾を振り振りプレゼントを隠してある場所へと佳乃ちゃんを連れて行く。と言っても観鈴ちゃんの家の裏庭なんだけどさ。佳乃ちゃんは、
「どうしたのぉ〜。ポテト? ここって観鈴ちんの家の裏庭だよぉ〜?」
 って不思議そうな顔をしていたけど、お構い無しで入っていくボクに、“お、お邪魔しま〜す” とやや遠慮がちに言いながら入ってくる佳乃ちゃん。くんくんくんとわざとに鼻を土の上にくっつけてお尻を振り振り探す真似をするボクに、佳乃ちゃんも興味津々な様子だ。確かこの辺りだったよね? と昨日埋めておいた場所を掘り返して、“ぴこぴこぴこ” って鳴くボク。もちろん“一緒に掘るの手伝って” って言う意味。“もう! しょうがないなぁ〜。ポテトは…” って言いながらも手伝ってくれる佳乃ちゃん。2人して掘っていくと、こつんと当たる音。“何だろうねぇ〜?” そう言いながら掘っていく佳乃ちゃん。当然そこには…。


「お姉ちゃん、お姉ちゃん。すごいでしょ〜? この貝殻。ポテトが観鈴ちん家の裏庭から掘り出してくれたんだよぉ〜?」
「ほ〜、それは良かったな? 佳乃」
 夜、その日の診療を終えた私に妹は嬉しそうに今日あった出来事なんかを言う。特に今日は妹の誕生日なので後でケーキなんぞを用意してあるわけなんだが、それにも増して妹はポテトのプレゼントが嬉しいらしく、身振り手振りを交えて話していた。まあ何と言うかポテトが日中いなくなったかと思ったら、ズリズリ貝殻を引っ張ってくるものだからびっくりして聴くところが、どうやら佳乃への誕生日プレゼントらしくそれならと私が一工夫加えてみたわけだが…。まあ神尾さん親子には今回協力してもらったので、後で何か好きなものでも贈っておこう。そう思いつつまだ熱気覚めやらぬといった感じでにこにこ笑顔で話す妹。そのすぐそばでは今日一番頑張ったポテトがやや疲れ気味に“ぴこぉ〜” っと唸っていた。それは向こうで“何でここの女たちはこんなに人使いが荒いんだ…。全く…。ぶつぶつぶつ” と文句をたらたら言いながらふて寝状態の居候兼雑用係兼妹の彼氏な国崎くんと同じなわけで…。同じようにゴロゴロしているものだからぷっと噴きだしてしまう。
「ケーキを切るぞ〜」
 とゴロゴロ転がっている1人と1匹に向かいそう言うと途端に飛び起きてこっちに座る。その格好といい行動といい何から何まで同じな感じがして、“全く何から何まで同じなのだからな? 君たちは……” と少々皮肉を込めて言ってやった。当然のことながら国崎くんから、“俺をこんな地球外生命体・毛玉犬と一緒にするな!!” と言う言葉が返ってくる名指しで言われたポテトはと言うと…、
「ぴこぴこぴこぴこぴこぴこぴこ!!」
 と反論でもあるのかそう言いながらやや上目遣いに国崎くんのほうを睨んでいる。そうだったな? 今日は佳乃にプレゼント用意してくれたものな? 言い返しても不思議ではないだろう。そう思いながら1人と1匹のやり取りを面白く見つめる今日6月12日、妹・佳乃の誕生日だ。

END