雨降りは家でゆっくりと


「雨だね〜。今日は観鈴ちん、お誕生日なのになぁ〜…。がお…」
 と俺の隣りで残念そうに俺の千年探し求めていた彼女がこう言う。まあいつもの年はこの時期になると、やれ海水浴だ! やれキャンプだ! などと幼稚園のガキどもを連れて出掛けるんだが、今年は例のコ○ナの件や梅雨の期間の長引きもあって家でじ〜っとしていることが多い。現に今、第2波が来ているみたいで御上が解除宣言を出してから最多数の感染者を出したみたいだった。ここ関西の田舎の海辺の町でも例のコ○ナ患者が出たらしく、俺の2大敵の1人である聖は診察に大わらわだ。もっとも俺の仲間内では今のところは大丈夫な感じだけどな。
 まあ先祖代々の探し人がまさかこんな田舎町の一軒家に住んでいたとは思わなかったんだが、その辺のいきさつについては良くは分からん。ただ家主の晴子の姪っ子だと言うことだけは聞かされた。まあ姪っ子だとは言ってもその辺の親子よりは仲良く思えるので、実際に叔母と姪と言っても10人中10人ともが“ウソだ〜” と言うに違いない。俺も観鈴の家に居候するようになってそう言うことを聞かされるまで本当の親子のように思っていたくらいだからな? でもまあのんびり屋の観鈴とせかせか動く晴子とではちょっと違うように思えてくるのは俺がこの町に慣れてきている証拠なのかもな…と最近思うようになった。
 で、今日は保育園も休みと言うことで、俺と観鈴は朝からぼ〜っと何をするわけでもなく呑気にテレビなんぞを見ながら過ごしているわけだ。そう言えば晴子はどうした? と隣りで俺の肩に体を預けている観鈴に訊くと、“お母さん、二日酔いでうんうん部屋で唸ってる。今日は往人さんに祝ってもらえって…” とやや心配そうな不服そうな顔をして晴子の部屋のほうを見ていた。そういや去年一緒に祝ってやった遠野の異母妹のみちるはどうしたんだ? と思って訊いてみると件のコ○ナのせいで夏休みの期間が大幅に短縮されてしまい、今は学校なんだとか。まああいつには会ってもいいことなんて一つもないので正直言うと、“い〜やっほう! 国崎最高!” とはなるが、来なけりゃ来ないで少しばかり手持ち無沙汰にもなる。
 そんな感じだから自然と寝転がっている時間が多くなる。それで晴子からは、“ただ飯食いの大喰らい” なんて言うありがたくもない称号を頂いているわけだが、まあ実際そんな感じなもんだから何とも言えんのは確かだ。雨さえ止めばなぁ〜っと外を見るが、雨は降る。しかも夕立のようにど〜っと降るので裏手の川が氾濫しないか心配なわけだ。晴子や聖から聞くところによると、前に2、3回氾濫したことがあったらしく、床下浸水も経験したそうだ。まあそれは20年くらい前の話らしいのと、今は護岸工事なんかも行なわれているので早々には災害級なやつは来ないだろうと言うことらしい。まあそれに年一回の割合で防災訓練なんぞをあれこれとやっているので心配はないだろうと言うことだそうだ。俺も何回か参加したがまあ爺婆が多くて話をしても耳が遠いのか、“もう一遍言うてもろてもええかの?” などとド○フのコントを肌で体感しているように感じることが多くある。
 そんな感じで今年は何もせず、家でゆっくりしようや〜と言うことで、のんびりとした休日を送っているわけだが、観鈴はどこか物足りない様子で恐竜のぬいぐるみを抱いてこっちを恨めしそうに見ている。はぁ〜っと一つ大きなため息を吐くと2人用の大きな傘を手に取って表へと出る。こいつの言いたいことは何となくだが分かってしまうので多分今日もこうしたいんだろうなぁ〜っとは思っていたわけだが、案の定にはは笑いの彼女が俺の後ろにくっついてきた。


「何も買ってないがそれでもいいのか? 少しくらいならあるぞ?」
 と往人さんは言う。わたしは別に欲しいものはないからううんと首を横に振った。こうして雨の日でも2人でお出かけできるだけで十分。にはは。と、買い物をしようと思ってたんだった…、そう思って商店街へと足を向けるわたしたち。今日はお魚が安いからお魚料理でいいよね? と思ってお魚屋さんのほうに向かう。往人さんはやっぱりお肉のほうがいいみたいでちらちらお肉売り場のほうを見てたから後でお肉も買って帰るかな? にはは…。そんな何も変哲もない今年のお誕生日だけど、お誕生日と言うだけで嬉しいなと思う今日7月23日はわたしの22歳のお誕生日。ぶいっ!

END

おまけ

 お母さんが帰って来てみんなで食事中に、往人さんとお母さんが目配せし合ってる。ま…、まさかとは思うけど、観鈴ちんだけ除け者? と思ってちょっとだけ悲しくなる。お母さんが往人さんのお腹を肘でついついっと押してるし、やっぱり観鈴ちんに隠れて2人でどこかに行こうとしてるんだ〜。そう思って、“が、がお…” って言いそうになるんだけど、
「み、観鈴…。お、おおおおおおおお俺とけ、けけけ結婚してくれ!!」
 とこう言われる。一瞬鳩が豆鉄砲喰らったかのようにほけっとした顔になるわたし。お母さんが嬉しそうな顔で、“あんたみたいなどこの馬の骨か分からんやつにウチの大事な観鈴ちんあげるんは癪やけどな。まあしゃあないわ” と言って嬉しそうに微笑む。未だに何が起こったのか理解できないわたしにお母さんが、ぽんぽんと肩を叩き、“幸せになるんやで。観鈴…” と言ってニカッと笑う。その顔に今までの嫌なことなんて全部吹き飛んで代わりに優しくて温かな気持ちが溢れてくるそんなプロポーズの夜だったんだよ。にはは…。

TRUE END