小さな箱の物語
今日12月22日は私の誕生日。だからではないのだけれど、ちょっと胸がドキドキしている。異母妹のみちるからは、“国崎往人からのプレゼントがあるかもね?” と今日のお昼国崎さんのいないいつもの廃駅舎でそう言われた。異母妹は昨日から冬休みだそうだ。昨日の夜、私の家にやってきた。身長も夏に見たときより少し伸びたみたい。うふふっ。今日は私のお誕生日なんだから、国崎さんも家に呼んで一緒にパーティーなんかをやろうかな? なんて今朝朝ごはんを食べてるときに独り言のように呟いていると……。
「それはいい考えね? 美凪。じゃあ今晩の用意をしなくちゃね? みちるちゃんもお手伝いしてくれる?」
「うん、お姉ちゃんのお誕生日なんだから、何でも言ってね? おばさん。みちる、頑張っちゃうんだから!!」
そう言うとえへへっと笑うみちる。お母さんもうふふと微笑んでいる。私はと言うと、“お姉ちゃんは今日は主役なんだからお手伝いはなしっ!!” とみちるに言われて今は一人で外をお散歩中。国崎さんは今の時間はまだお仕事中だし…。そう思って辺りを見回す。どこの家もクリスマスの準備で大慌てのよう…。ふと空を見上げるとどんより曇っていた。今日は寒い。“今夜は雪になるかも知れません” って言う天気予報は案外当たっているのかも…。そう思いまた歩く。
ふと空に帰っていった一人の少女のことを思い出した。今頃は国崎さんの言っていた羽の生えた少女に会って楽しいお話をいっぱい聞かせているのだろうか…。そう思いながら空を仰ぐ。と白い妖精たち、そう、雪が静かに舞い降りてきた。“どおりで寒いと思いました…” と独り言。淡雪だから地面に落ちるとそのまま融けていっちゃう。この時期の雪はこんなものだ。そう思いながらお散歩を続けた。
私の通う学校は今日から冬休み。普段ならこの時間だと部活動とかで賑わっているのに閑散としている。また歩く。お友達の神尾さんの家の前を通ると賑やかな声が聞こえてきた。多分お母さんと楽しい時間を送っているのだろう。そう思う。国崎さんも時々お呼ばれされているみたいなのですが今日はいないみたい…。少し早いですけどメリークリスマス、神尾さん…。そう思ってまた歩き出した。路地を抜けて大通りへとやってくる。この街では一番のメインストリート。母や私がお世話になっている“霧島医院” もその界隈にある。ふとその方向を見るともうクリスマスツリーに電飾をピカピカ光らせていた。多分霧島さんが先生にお願いしたんだろう。“お姉ちゃんは何でも言うことを聞いてくれる最高のお姉ちゃんなんだよ〜っ!!” といつも口癖のように言っている霧島さんが少し羨ましく思えた。
また歩く。こつこつと歩く靴音も軽やかに、ようやく目的地が見えてくる。店の前ではちょうど仕事を終えたんだろう。国崎さんが出てくるところだった。私の存在に気がつくと彼はちょっとドキドキしたような顔になって、
「な、ななななんだ? 遠野。家で待ってるんじゃなかったのか?」
「いえ…。パーティーの準備の邪魔になるからと出てきました…」
私はそう言うと微笑む。“そ、そうか…” そう言うと国崎さんは頬をぽりぽり。その顔にまたにっこり微笑む私。そうだ、みちるから招待状を預かってきたんだっけ? 歩きながらガサゴソと探す。あった! そう思い国崎さんの前に出るといつものようにこう言う私。“進呈” って…。いつもの袋とは違う紙の袋。彼も分かっていたみたい。いつものように、“進呈返し” って返さずに、素直に受け取ってくれる。私はそれが何より嬉しい。また歩く。廃駅舎の前を通りかかると、“ちょっと待っててくれないか?” と国崎さん。こくっと首だけを縦に振ると、私はそこで待ちぼうけ。雪はひらひら舞っている。急に冷え込んできたんだろう、道路の端の草木の枯れたところには薄っすら積もっていた。
「待たせたな? 遠野…。これ、クリスマスとお前の誕生日のプレゼントだ。安っぽいからって怒るなよ? これでも食いたい物も我慢して貯めたんだからな?」
そう言うと彼は私の手の上に小さな箱を乗せる。“開けても…いいですか?” そう言う私にぶっきらぼうに“は、早く開けろ!!” という彼。飾りのリボンを解き、包装紙をきれいに破ってみると小さな箱があった。その箱を開けると中には……。
夜、みんなが寝静まったあともう一度机の引き出しからあの箱を取り出してみる。箱は何の変哲もないただの箱。でも私にとってはとても大切な箱だ…。ちなみに中身はもうないのだけど…。だって、もう左手の薬指にはめちゃってるんだもん。ベットではみちるが嬉しそうに、“参ったか〜。国崎往人〜” ってにはには笑いながら寝言を言ってる。うふふっと微笑むとみちると同じベットに入る。温かな感触が私の眠気を誘う。スタンドの電気を消すと一気に夢の中。最後に私はこう呟いた。
“国崎さん、今日はありがとう……”
って……。
END
おまけ
翌朝、みちるは私の左手の薬指に気がつく。“お姉ちゃん? その指輪どうしたの?” って…。ぽっと顔を赤らめる私に、むむむむぅ〜っと言う擬音を発しながらみちるは指輪を見つめている。怪しいとでも思ったのだろうか? 何度も尋ねてくる。でも私は黙ったまま。だって恥ずかしいんですもの…。あっ! と気がついたのか、“国崎往人からのプレゼントだね? お姉ちゃん” と言ってくふふふっと微笑むみちる。
私の頬がさらに真っ赤になったことは言うまでもありません…。ちょっと早いサンタクロースさんからのプレゼント。改めて国崎さんには感謝ですね? そう思いながら今日も彼のお弁当を作る私がいるのでした…。ちなみに今日は昨日のお礼と言うことでお米券を30枚ほど、進呈するつもりです。うふふっ…。
TRUE END