女医、また風邪を引く?
「ごほっ、ごほっ、ごほごほっ…。う〜んう〜ん。国崎君め〜。また私に風邪をうつしおって〜っ!! 死んだら絶対化けて出てやるぞ〜っ!! ごほごほごほっ!!」
と言う地獄の底からの呪詛のような声が壁一枚隔てた部屋から聞こえてくる。今日1月3日は三元日の3日目でもあると同時にこの恨みを込めて俺を呪詛するような言葉を発している女医であり、俺の居候先の家主でもある霧島聖の誕生日だ。この非常に俺に対する恨みのこもった声を発している女医の妹で、まあ何と言うか俺の彼女の佳乃は遠野のところへ勉強を教わりに行っていて留守なわけで。今頃はちょうど勉強にも飽きてきて持っていった菓子の1つでも食べてる頃か、同じく一緒に勉強に行っているであろう観鈴と何かの話題で盛り上がっているころだろう。そう思いつつ俺は1人くだらん漫才番組なんぞを見ているわけだ。
佳乃が観鈴たちと知り合ったのは俺を介してからだった。同じ学年だから知り合わないほうがおかしいだろ? と思っていたわけだが、それは俺のとんでもない錯覚と言うか、ミスと言うか、そんな感じだったわけで。佳乃は観鈴たちとは1つ年下だったということらしく。どおりで勉強のやっている内容が少しばかり違うな…と思っていたわけだが、要はそれが原因だったらしい。そのことを佳乃に言うと、途端に不機嫌そうな顔になって、“往人くんなんて嫌いだぁ〜っ!!” と大声で言われてそれに気付いた今俺を呪詛している凶悪女医者にメスで追い掛け回されたことは言う間でもなく、切り傷だらけになっていたことはもう近所界隈の周知の事実だった。と兎角何かにつけて小姑パワーが炸裂し、その被害が俺に向くのは1000%確実なわけなので、今こうやってうんうん唸ってくれてる分には非常にありがたいわけなのだ。飯はおせちの残りがあるし、当分の間は心配はない。かつ佳乃は今日遠野の家に泊まりがけだと言うことでこの家は俺がもらった! と言うことになるのか? まあとにかく気兼ねも気苦労もなくゆっくりくつろげるわけで、う〜んと背伸びをするとまたテレビを見始める。
とずりずり何かを引きずるような音が聞こえてきた。何だぁ? と部屋を見渡すが何も異常がない。隣りか? と思いそ〜っと襖を開けるといつぞやかの晴子のように顔を真っ赤にしながら、“佳乃〜、佳乃〜、どこに行った〜? お姉ちゃんを置いて行かないでくれ〜っ…” と少々熱で頭がおかしくなったのかどうかは知らんが、げほげほ言いながら床を這いずり回っている聖がいる。だぁ〜、もう! 面倒しい! そう思いながら元の位置に戻す俺。途中、何やら柔らかい部分を掴んだ気もするが、気のせいだ。気のせい…、うん。蹴散らかした布団を元に戻すと、どっこいしょと持ち上げて所定の位置へ寝かせて布団を掛け直した。まあ姉妹なんだから似ていると言うと似ているわけで。むにゃむにゃ何か寝言を言っている顔を見ていると佳乃がもう1人いるような感じだ。もっともメスを持って俺を追いかけまわす佳乃と言うのは想像出来ないし、したくもない。そう思いながら部屋を後にしようとして、んっ? となる。どうやら俺の服を掴んでいたみたいだ。とりあえず掴んでいる手を放し、部屋を出ようとして躓き顔からバターンと倒れる。今度は何だっ!! と見てみると、俺のズボンに手をかけていやがる。だぁ〜、もう! 鬱陶しい。と思いつつ掴まれた手を放すべく悪戦苦闘しているところへ…。
「往人くん! これはどういうことなのかちゃんと説明してっ!!」
と目をぐりぐり言わせながらぷく〜っと頬を極限まで膨らませて俺の顔を上目遣いに見遣る佳乃。聖はと見ると、“国崎君が私を手籠めにしようとしてたんだぁ〜” と俺をピンチにさせようとする文言を言っている。さらにぐりぐりした目をしながらぐぐぐぐ〜っと見遣る佳乃。その迫力たるやさすがは凶悪女医者の妹だな? と思わざるを得なかったわけだが…。結局遠野の家でやっていた勉強会は霧島医院でやることになり、俺は佳乃の隣りでじっと座らされた挙句、佳乃に腕を組まされて動けず仕舞いで(まあぽにゅっとした佳乃の胸が手に当たる感触は何と言うか心地よかったり恥ずかしかったりしたわけだが)、かつみちるのイタズラにも反撃も出来ずにこめかみをぴくぴくさせながらじっと耐えていた。聖はと言うとそんな俺を非常に恨めしく見つめていたんだろう。後ろのほうから俺を呪詛するようにぶつぶつ何やらかやと呟いていたからな? まあ医者の不養生の結果だから俺は知らん! …とは思うものの、後で無理難題を押し付けられそうな感じがビリビリ伝わってくるそんな今日、1月3日は俺の彼女の姉で人遣いの荒い家主、霧島聖の誕生日だ。
END
おまけ
余談だが聖の風邪も治ったころに10万円と言う途方もない請求書を家主に叩きつけられて、“何じゃこりゃ〜?” と某刑事ドラマの刑事の殉職シーンみたく言ったことは言う間でもない。にた〜りと怪しく笑いながら家主はこう言う。
「まだ佳乃は高校2年生だ。高校生に対しての君のあのうらやま…、こ、こほん、無礼な行為に対する額だと思うが? 違ったか? …まあ何だったら出るところに出たっていいんだぞ〜?」
おい! 今、本音が出てたぞ? とは思うが、不敵な笑みと言うか恐ろしいくらいに澄み切った笑みを浮かべながらそんなことをのたまう女医には何も言い返せず(もし言い返したらどこぞの岸壁のテトラポットの中で永遠の眠りにつきそうだったので)、ますます小姑の嫁いびりみたく些細なことでいちゃもんをつけてくる聖にむかつきを通り越して殺意まで出て来そうになる今日この頃である。うぐぐ〜っ!!
TRUE END?