女医さん、また酔っぱらう
今日1月3日は三元日の3日目であり、俺を馬車馬のようにこき使うこの町唯一の医者でありまた彼女の姉である聖の誕生日でもある。この間と言うか1年前酔っぱらった聖に日頃の恨みか知らんが俺はとんでもないことを言ってしまい、それをしおらしく聞いて実行に移す聖の姿にものすごい恐怖を感じてしまったわけだが…。今も親交のある? 晴子とは真逆に酔うと言葉遣いも丁寧になりかつ仕草そのものも非常になよっとした感じなる聖は正直色っぽく見えるし普段の遠野をさらにパワーアップさせたようになる。まああの時は彼女である佳乃に無茶苦茶怒られて(これは俺もなんだが…)、あと俺は聖にしたことを佳乃にもしないといけなくなってしまい、ぽにゅぽにゅした感触を1ヶ月ほど体中に感じさせられたわけで…。まあ嬉しさもあったがそれよりも恥ずかしいのも山々あって、さらに聖の俺を睨む目に恐怖以外何物でもないものを感じたわけだ。と言うか愛用のメスを指の間に4本入れて不気味に笑う姿は想像しただけで今でも恐ろしい。
で、今現在。今年から佳乃も飲める歳になったので3人で杯を交わしていたわけだが、案の定酔っぱらった聖が急にしおらしくなって、佳乃は佳乃で、わがままをさらにパワーアップさせたかのように俺の腕にぎゅ〜っと自分の体を押し付けて、“お姉ちゃんがそんな女っぽくしたって往人くんはあたしのものなんだからねぇ〜っ!!” と言いながら唇を寄せてくる有様で。普段だったらそんなことをしようものなら俺は切り刻まれて今頃は辞世の句でも読んでるところなんだが、如何せん今は酔っていて、“国崎さんが決めることなのではないの? そういうことは…” と体を俺のほうに押し付けてばっと佳乃を制している始末だ。
「で、往人くんはどっちが好みなの? やっぱりおっぱいの大きなお姉ちゃん? それともあたし?」
と佳乃は酔っぱらった目ながら真剣に聞いてくる。聖も俺の目を見つめながら答えを待っているという表情だ。顔を見ると姉妹なんだから当然だろうとは思うが似ている顔が二つ、俺の一言に期待と不安を滲ませて待っている。 一応佳乃の彼氏と言う立場なんだから佳乃のほうに軍配は上がるわけだが、今の聖は何とも魅力的な感じもする。しかも昨年のあの出来事以来、俺は自分の中で聖を女として見ている節もあったりするわけだ。両方好意を持ってくれていることはありがたいわけだが、やっぱり彼女のほうに軍配は上がるわけで…。
「ふっふ〜ん。お姉ちゃん。分かったでしょ? 往人くんはあたしのものなんだからねぇ〜。さあ往人くん、あたしの部屋に行っていっぱいエッチなことしよ?」
と聖にも目劣りしないほどの立派に育ったものを押し付けるように俺を2階へ上げようと躍起になる。聖はと見るとしおらしく横座りしながら床にのの字を書いている始末。それがなぜか哀れに思った俺は佳乃にとあることを言うのだが…、今考えるととんでもないことを言ったと後悔してもしきれん。しかし今まで棣鄂之情のような関係だった姉妹仲を俺が壊すようなことはしたくないので言うのだが…。
「往人くん…。もしかしてだけど、一瞬お姉ちゃんのほうがいいなぁ〜っとか思わなかった? いや、思うわけないよねぇ〜。おっぱいもこんなに大きくて張りのあるものに成長したあたしがいるんだもん」
とここぞと言わんばかりにぽにゅっと胸を俺の体に押し付けてくる佳乃。もちろん努力してここまで大きくした点ではそれこそ涙ぐましい努力の成果はあっただろう。しかしそれも裏では聖の弛まぬ支援があったからこそであり…。そう考えて佳乃にそのことを言うと、“それはお姉ちゃんにも感謝はしてるよぉ〜? でもあたしの大好きな往人くんを誘惑して酔っぱらうお姉ちゃんは嫌いだよぉ〜…” とにべもない言葉が返ってくる。佳乃自身も昨年の聖の酔っぱらった姿を見たのは初めてだったんだろう。だからあの衝撃的な光景を目の当たりにしてこんなに警戒しているわけだ。あれは俺が悪かったとは口が乾ききらない内に何回も何回も謝ったんだが…。まあ誕生日くらいは好きにさせてやろうやということで何とか話も纏まって階下に降りて聖を呼ぶ。ともう足もふらっふらな聖が、“わ〜、お兄ちゃんだ〜” と無邪気な笑顔で飛び込んでくる。酔っぱらいもここまでくると逆に妙な感動を覚えてしまう。あれから1人で飲み続けていたんだなぁ〜っとそっちのほうに目をやると案の定一升瓶が空になっていた。
「お兄ちゃんがいないからわたし、ず〜っと待ってたんだよぉ〜? 抱っこして抱っこ!!」
ともはや幼児化している聖を言いなだめる俺。しかし、ここで折れないのが聖の聖たる所以だなぁ〜っと思うわけで…。“佳乃ちゃんにはしてくれてもわたしにはしてくれないなんて不公平だよぉ〜っ!! もう、こうなったら、えいっ!!” と言うと、俺の背中めがけて突進してきておんぶさせられる。はぁ〜、これで明日には俺の名前が立派なものへと変わるんだなぁ〜っと思いつつ、まるで死刑囚が執行日に十三階段を上らされるような気持ちで階段を上る俺がいたわけだが…。
「う〜っ、昨日はあれからどうなった? 私が国崎くんに甘えて…って! 甘えてなどいないっ!! 決して甘えてなどっ!! …ふぅ〜。取り乱してしまったが、まあいい。問題はその後なわけだが……、うが〜っ!! お、思い出せん」
などと言いながら頭をふるふると降っている聖がいるわけだ。まああんな幼児化してくるなんて言うことを言ったら酒は絶対に飲まんようになるし、飲まんようになると俺に対する風当たりもさらに厳しくなるのは想定内な出来事なのでこのことは霧島家の中では絶対のタブーとして収めていくことになるだろう。と言うか俺が佳乃に絶対服従しないといけない理由がまた出来てしまったわけになる。今朝も今朝で起き掛けにおんぶを強要され、いやだと断ったら、“あれぇ〜? いいのかなぁ〜? あたしにそんなこと言ってもぉ〜? お姉ちゃんに言っちゃうよぉ〜?” と、勝ち誇った笑みを浮かべて言ってくる始末だった。ますます佳乃の暴君化は進むし、聖は聖でそんな佳乃を甘やかす悪循環が続く。で一番割を食うのが俺なわけで…。秘密を握られた男がどんなに弱いものなのかがよく分かる昨日1月3日は俺をこき使う家主・霧島聖の誕生日だ。
END