アダルティック風子?
「風子、お子ちゃまじゃありません! 全く岡崎さんはこんな素敵なレディーに対して失礼にもほどがあり過ぎますっ!!」
俺の顔を上目遣い睨みつけながらちびっこい体の女性はそう言う。今日7月20日は、俺のまあ何と言うか保護対象者であり娘の姉的な存在であり、嫁の親友である伊吹風子の誕生日だ。祝日と夏休み初日(まあ先週の金曜日に終業式があったのか実際には2日ほど経っているわけだが…)と言うこともあって俺家族とオッサンたちと今日の主役である風子と一緒に近くのプールへ足を運んだわけなのだが、娘の去年の背丈やら体型やらを合わせたような子供っぽいフリルのついたワンピース型の水着を着こんだ風子がこっちを上目遣いにぐぐぐぐっと睨みながらそう言う。おそらくは公子さんが持たせたんだろうな? そう思った。俺の上司であり風子の義兄である芳野さんも参加してくれるはずだったのだが、仕事上どうしても外せない用事が出来てしまい、風子の世話を俺に頼んでいたっけか…。まあ俺も実のところでなくてはいけなかったのだが、芳野さんに、“お前にはお前にしか出来ないことがあるだろう? 家族を楽しませるって言うことが…”といつものアツい言葉で俺の心を鷲掴みにしてくれる。俺もあんな言葉が自然に出てくるようになるんだろうか? などと今更ながら考えている。
で、風子だ。まあ背丈のほうも少しは伸びたし少しは出るところは出て引っ込むところは引っ込んでるんでスタイル的には中学生か、悪くても高校生くらいには見えなくもないわけだが…。最近は小学生でも発育のいい子もいるわけで…、と言うかうちの娘がそんな部類に入るんだが。5年生にして出るところはしっかり出てるし引っ込むところは引っ込んでて何とも将来が末恐ろしい感じなわけだ。もっとも本人に至ってはパパ、パパと俺にくっついてくるわけで。嫁は嫁で,、“パパはママのものなんですぅ〜っ!!” と言って俺にギュッと抱きついて離れない。それが嬉しいのか悲しいのかについては今日は端折らせてもらうが、そんな抗争がつい先日起こって嫁は、“実家に帰らせてもらいますっ!!” と言って実家である古河パンのほうに走っていってしまった。娘は、“汐のせいだ〜っ!” と自己卑下するように泣いてしまうし、俺は俺でなんでこうなった? と思いながらも娘の手を引きながら古河パンのほうに足を向ける。と言っても目と鼻の先が嫁の実家なので普段から行き来はしているわけだが。2人して頭を下げて謝る。…が子供のようにぷぅ〜っと頬を膨らませる嫁にはほとほと困るわけで。まあその時はオッサンや? 早苗さんの仲介もあって何とか嫁の機嫌も直って元の鞘に収まったわけだが、その原因が今日の主人公であることは俺たち家族以外は知らないだろう。そう思うわけだ。
で、その原因である風子はと言うと、俺のあまりの素っ気なさに腹が立ったのかこうやってむぅ〜っと上目遣いに見遣っているわけで…。と言うか水着があまりに子供っぽくってどう判断していいのか分からんわけだが。公子さんの無邪気さの中の底知れぬ悪意というものが感じられるわけだ。まあ公子さん自体は絶対、“可愛い” と思って持ってこさせたんだろうと思うんだが、見た瞬間に“小学生?” と言ってしまい今の状況に至っている。もっとももっとアダルティックな水着も持ってきてるとは本人の談だが、どんなにアダルティックな水着を着てきたってこのお子ちゃまな感じの風子には似合わんだろうな? そう思う。これがもし風子の親友? のことみだったらばっちり俺やオッサンの目に留まってそれこそ地獄絵図の様相を呈してくるんだが、それは何でも…と言う感じで神様も分かってくれたんだろう。大学の講義とかで出ていて今ここにはいない。
「風子ちゃんのお誕生日会、とってもとっても出たいのに…。こんなときに限って大学でお勉強をしないといけないの。残念なの…」
とはことみの談だ。もっともことみの場合は教わるほうじゃなくって教えるほうなわけなのだが…。まああんな最終兵器級なボンキュッボンな体を見せつけられた日にゃそれこそとんでもない悲劇? が待っていることは明らかなのでこれはこれで良かった。そう思って準備体操からストレッチと一連の作業を終えてプールへどっぽ〜んと飛び込む。汐は風子と一緒に水の掛け合いなどを行なっている。水着を見るとフリルのついたワンビースタイプだ。娘はちょっとオシャレに黒のビキニタイプな水着なんかをつけていて(と言うか小学生にしては発育がよすぎるんじゃないか?)、それがより一層風子のお子ちゃま度? を上げているわけで…。羨ましそうに娘の体を見る風子の背中に哀愁じみたものを感じてしまう俺がいた。とは言えそれぞれにプールを満喫しているわけだ。オッサンと早苗さんはいつものようにプールサイドで愛を語らっている。一種異様な光景なんだが俺はもう見慣れてしまった。かく言う俺はと言うと、嫁の手を引き泳ぐ特訓をしているわけで…。まあ子供のころから病弱で運動はなるべく避けていた嫁だからか当然泳ぎのほうも達者ではなく。手を引いてのバタ足から入るわけだが、これがこっ恥ずかしい。風子たちはと見てみると水の掛け合いをしている。当然娘のほうが体型は女性っぽいので、ほかの人から見ると、“あらあらいいわねぇ〜。お姉ちゃんが妹の面倒を見て…” となってしまう。この場合どっちがお姉ちゃんなのかは割愛させてもらうが…。一通り遊んで休憩しようと言うことになる。オッサンたちは除外するととして、俺と嫁と娘と風子は、施設内の休憩所で昼飯を頂くことにした。と、ご機嫌ナナメな様子の風子はぷんすかぷんと言う擬音も出そうなくらい不機嫌そうな顔でぎろりと俺のほうを見つめてこう言う。
「風子、お子ちゃまや汐ちゃんの妹なんかじゃありません! 汐ちゃんのお姉さんなんですっ! それなのに全く岡崎さん含む男性の皆さんはこんな素敵なレディーな風子に対して失礼にもほどがあり過ぎますっ!! 何で汐ちゃんばかり声を掛けて風子には掛けてくれないんですかっ? 最悪ですっ!!」
いや俺に当たってこられても困るんだが…。“と言うよりその水着が原因じゃないのか?” と極々正論? を言うと、“変な岡崎さんにしては正論ですっ! 着替えてきますから待っていてくださいっ。大人な水着を着た風子に岡崎さんはじめそこら辺の男の人は風子の魅力にメロメロですっ!!” そう言うと更衣室のほうに走って行ってしまう。どんな水着を身に纏ってくるつもりなんだ? と少々ドキドキしながら待つこと10分少々。ふふん♪ とでも言わんばかりに妙にモデルっぽい歩きをしながら出てくる風子。その水着はと言うと…。
「まさかV字の紐ビキニとは思いも寄らんかった。と言うかお前にはまだまだ早すぎると思うぞ? もう少し…、あの、ちょっと…、ですね?…。出るところは出ていた方がいいかなぁ〜なんて思うわけですけれども…」
とプールからの帰りしな、そんなことを言うが早いか、嫁と娘と風子にぐぐぐぐっと睨みつけられて急に敬語調になってしまう俺。ギャップもある程度の許容を越えればイタイとしか言えなくなるのは目に見えて分かっていたことだが、あれは明らかにイタイ光景だった。とにかく風子には普通のワンピース物の水着がいいやい! と俺は思う。ちなみにオッサンたちは愛を語らうのに必死で俺たちのことには気がつかなかったらしい。嫁も娘も若干引いていたのに今は非難の目を俺に向けてくるわけで…。“パパ(朋也くん)、風子お姉ちゃん(ふぅちゃん)に謝りなさい!!” と言われて謝るものの、“風子、今、頭が火山のようにどっかんどっかん噴火してますっ!! とにかく岡崎さんは究極最大最高最悪ですっ!!” と頬を極限状態まで膨らませてそんなことを言われてしまったことは言うまでもなかった。で罰として後日俺だけ真夏のくそ暑い中、ヒトデ探しをさせられたことは言う間でもない事実だったわけで…。何で俺だけなんだ? と文句を言おうにも当の本人は汐と一緒に水族館に出掛けてしまっていた。もう…、もう絶対風子とは水着イベントには誘わねぇ〜っ!! と思った7月20日、自称娘の姉で嫁の親友で俺の保護対象者? な伊吹風子の誕生日だ。ぐふっ…。
END