水着選びに付き合って?


「もう夏なの…。今年は海に行こうと思うから水着を選ばなくっちゃいけないの…」
 初夏の日差しが眩しい今日5月13日は私のお誕生日。いつものご本がいっぱいあるお部屋で私は一言そう言ったの。傍らには朋也くん。私の一番大切なお友達。でもちょっといじめっ子なの…。この前も、“あ〜あ、横浜3連敗か…” って私の好きな球団のことを持ち出してイジワル言うの…。ちなみに私のお友達の風子ちゃんも横浜ファン。風子ちゃん曰く、“あのヒトデ型のマスコットが可愛らしいですっ!!” って言うことらしいけど、あれはヒトデじゃなくてお星様なの…って言ったら風子ちゃんは、“ことみさんはまるで岡崎さんみたいですっ!! 最悪ですっ!!” って言いながらこっちをうううっと睨んでたの…。いじめられそうだったから、その場はヒトデって言うことにしたんだけど、あれはどう見ても星だと思うの…。
「ああ、もうすぐ夏だからな?」
「もうすぐじゃないの。立夏はもう過ぎてるから暦の上ではもう夏なの…」
「ほほう…。じゃあことみは今から海水浴でも行くのか?」
 こう言う朋也くん。いつも思うんだけどこう言うときの目は子どもの頃のままなの…。そう思いながらふるふると首を横に振る。“何も今日買わなくったって…、って! そうか、今日お前の誕生日だったな? すっかり忘れてたわ…。アハ、アハ、アハハハハハ…。ごめん” そう言ってぺこっと頭を下げる朋也くん。“私のお誕生日忘れたの? 朋也くん…” そう心の中で言う私。ちょっぴり悲しいの。ぷぅ〜っと頬を膨らまして涙目になって朋也くんの顔を見つめる。朋也くんはと言うといじめっ子みたいな顔で私の顔を見てるの。ひ、酷いの、朋也くん…。もう怒ったの! 私の誕生日を忘れてた朋也くん。許せないの。何か罰を与えないといけないの。そう思った私はこう言ったの。
「私のお誕生日忘れた罰に水着選びに付き合ってもらうの。断ったら智代ちゃんと杏ちゃんと渚ちゃんに言って怒ってもらうの!」
 ふふんと胸を張るの…。朋也くんは智代ちゃんと杏ちゃんと渚ちゃんが怖いみたい。私はぜんぜん怖くないと思うんだけど…。朋也くんは“女番長2人組と、最終兵器だ…” って言って前に私にイジワルして、怒られたときのことを思い出したのか、ぶるんって身震いしちゃってるの。ちょっぴり可哀想だとは思ったけどまあいいの。これで大好きな朋也くんに水着を選んでもらえるの…。最新の流行は全然分からないし、知らない私。ほんとは杏ちゃんにお願いしようと思ってたんだけど…、
「ことみ、そう言うことは朋也に頼んだほうがいいわよ? だってことみの彼氏なんでしょ?」
 って半分笑いながら半分真顔でそう言われたの。でも、朋也くん好みの水着ってどんなのなの? って考えてると直接朋也くんに聞いてみたほうが早いかなって思って今日こうして水着選びに付き合ってもらおうって思って誘ってる訳なんだけど…。
「水着なんて、ど、どどどれも、お、おおお同じだろ? それにことみだったら何を着ても似合うって!!」
「むぅ〜。聞き捨てならないの、朋也くん。こうなったらどんなことをしてでも付き合ってもらうのっ!!」
 朋也くんの言葉にカチンと来た私。朋也くんの服の袖を引っ張ってずるずる歩き始めたの…。“服が伸びる、服が伸びる〜っ” って言いながら朋也くんは私の後をついてきたの。


「はぁ〜…。行き当たり止むを得ん事情なんだが…。違和感ありすぎるぞ、ここ…」
「そんなことないの。ほら、あっちのほうに男性用の水着もあるから…」
「でもほとんど女性用の水着ばかりじゃないか?」
 駅前のスポーツ用品店。私は朋也くんとやってきたの。今日の広告に書いてあった可愛らしい水着がいっぱいあるの…。早速選んでもらうことにするの…。って朋也くん。逃げちゃダメなの!! こそこそ立ち去ろうとする朋也くんの袖をつまんで引き寄せる私。ちょっとぷぅ〜っと頬を膨らませると朋也くんの顔を睨むの…。
「わ、分かった、分かったから睨むのはやめてくれ…」
 半分諦めたかのように言う朋也くん。一方の私はにこにこ顔。早速水着を見てまわるの。この時期は水着コーナーが多いの…。売り場の半分が水着になっちゃってる。“そりゃ夏物商戦の最優先課題って言うかそう言うものだからな?” とはぁ〜っとため息を吐きつつ朋也くん。早速可愛い水着を発見。朋也くんの袖をつまんでそっちのほうへ歩くの。
「どうかな? 朋也くん。感想を言ってほしいの」
「まあ似合うんじゃないか? って言うか俺に感想を求められてもなぁ〜…」
 そう言って朋也くんは頬をぽりぽり。それじゃあお話にならないの。もっとちゃんと見てほしいの…。そう思って朋也くんと同じ方向を見た私。紐のようなものがあったの。あっ、あれは杏ちゃんが言ってた紐ビキニって言うものなの? “ことみだったら似合うかもね〜? 朋也も惚れ直すかもよ?” って言ってたっけ? そう思ってとことこ紐ビキニのコーナーに行こうとすると、がしっと腕を掴まれるの…。掴まれた先を見ると案の定朋也くん。
「あ、あああれはダメだっ!! あんなもの着て砂浜に出たら春原みたいなやつがどんどん寄ってきていじめられるぞ?」
 いじめられるのはイヤなの…。でも春原くんはいじめっ子じゃないの。どうしてなの? そう思って小首を傾げる私。あの水着も結構可愛いのに……。
「と、とにかくダメなものはダメだっ!! 無難にワンピースタイプの物にしておいてくれ…」
「ビキニは? ビキニはダメなの?」
 そう言う私。実は広告に可愛いと思ったビキニがあったの。あそこにあるんだけど星型のストライプがとてもきれいなの。でもちょっと布地が少ないけどあれはあれで可愛いし似合うと思うの。そう思ってお気に入りの水着を指差して朋也くんに聞いてみると?
「マ、マイクロビキニ? おい、ことみ…。いじめてやろうか?」
 そう言った朋也くんの顔は昔の頃のいじめっ子の朋也くんの顔だったの……。


「ったく、杏のやつめ…。人の彼女だと思ってあることないこと無茶苦茶吹き込みやがって…。で、素直に言うことを真に受けることみもことみだ! 全く…。ぶつぶつぶつ…」
 朋也くんはご機嫌斜めって感じでさっきからぶつぶつ文句を言ってるの。私はと言うとにこにこ顔。あの後、泣きべそをかいてた私にさすがに悪いと思ったのか朋也くん。“普通のビキニだったらまあいいか。ことみは似合いそうだしな?” って、恥ずかしそうに頬をぽりぽりかきながらそう言ってくれたの。お店の店員さんに選んでもらってサイズも測ってもらって買ってもらった水着は今は私の手の中。しっかり抱きしめてるの。にっこり微笑むと私はこう言うの…。
「朋也くん、とってもとっても可愛いプレゼント、ありがとうなの。今年の夏はみんなで海に行こうね?」
 って……。西日は眩しくもう夏を思わせるかのような天気。この分だと今年も暑くなりそうなの。地球温暖化はますます進んでると思うの。でも夏は暑いほうがいいと思うの。暑すぎるのはどうかとは思うんだけどね? そう思う今日5月13日は私のお誕生日なの……。

END