同窓(?)誕生日会
今日9月9日は私とお姉ちゃんのお誕生日。だからお姉ちゃんの旦那様の春原くんと、私の愛する人、勝平さんがお誕生日会を開いてくれるそうです。と言ってもこの企画の立案者は岡崎くんだって勝平さんから聞きました。高校時代はちょっと怖くてあまりお喋り出来なかった岡崎くん。密かに私が思い続けた人でした。でももうそれも6年前のこと。彼は渚さんと結婚して今は汐ちゃんって言う可愛い娘さんと一緒に、渚さんのご両親の近くのアパートで3人暮らしだそうです。私も勝平さんと伺ったこともありますし、汐ちゃんの保育園の先生であるお姉ちゃんと一緒に伺ったこともありますが、とても幸せそうでした。
かく言うお姉ちゃんも今は身重の身なので、私も時々お姉ちゃんの家に行ってあれやこれやとお手伝いしています。もう安定期に入っていると私が勤めている病院の産婦人科のお医者様も仰ってくれているので一安心です。わ、私のほうは…、その…、まだですけどね?…。お姉ちゃん曰く、“新婚気分をもう少し味わっときなさい” と言うことなので、もう少しはこれでもいいかなぁ〜って思ってます。
汐ちゃんは仲良しだった先生(お姉ちゃん)が今月から産休に入ってしまったのでちょっと寂しそうですけどね? でも岡崎くんに“汐、お姉ちゃんになるんだぞ?” って言われてにこにこ顔です。汐ちゃんと同じ目線になってそう言っては優しく頭を撫でる岡崎くん。そんな岡崎くんを見て私は、私と勝平さんにも子供が出来たら、岡崎くんや渚さんみたいな素敵な親になりたいなぁ〜と思いました。だって汐ちゃんの笑顔がすごく可愛いんですもん。
そう思いつつ、今回のお誕生日会の会場である古河パンに向かいます。久しぶりなのでちょっとドキドキしてます。昨日岡崎くんから電話が掛かってきて、“智代もこっちに来てるみたいだから同窓会みたいな感じのパーティーにするけど…。藤林はそれでもいいか?” と聞いてきました。春原くんがいつもケンカを仕掛けては一方的にやられていた相手の智代さん。今は町から少し離れた山村の小学校の先生として働いているそうです。
「わ、私はいいですけど…、春原くんやお姉ちゃんはどうなんでしょう?」
そう受話器越しに言うと、ちょっと笑って言う岡崎くん。“杏には言ったぜ? あいつも会えるの楽しみだってよ? それから春原にはサプライズってことで言ってないからな? あっと、このことは杏も承諾済みだから” とちょっとイタズラっぽく笑う声。お姉ちゃんの承諾もあるし、それに春原くんももう無茶はしないだろうし…。そう思って、“分かりました” と返事をしておきました。
勝平さんと二人でおしゃべりをしながら歩きます。歩くこと10分。古河パンのお店が見えて来ました。それと渚さんのお父さんと岡崎くんがベーゴマで対決している姿も…。勝平さんが一言、“変わってないなぁ〜。朋也くん…” と半ば諦めた表情で言うので、それが何だかおかしくて、“うふふ” って笑ってしまいました。と、汐ちゃんが気がついたのか手を振ってます。岡崎くんと渚さん、渚さんのお父さん、お母さんも気がついたのか、にっこり微笑んでいました。
「久しぶりだな? 勝平。ってこの前会ったっけ?」
「そうだよ。朋也くん。この前家のクーラー故障したときに修理に来てくれたじゃない」
“ああ、そうだっけ?” と言うと笑う岡崎くん。昔、そう高校の頃はこう言う感じの人じゃなかったですね? いつも何か暗い影を持っているような感じの人だったように思います。今では明るい誰からも好かれる人。根は正直で優しい人なんだなぁ〜っと私は高校時代から気付いていましたけどね? いや、私だけでなく私の知り合いの人はみんな知っていることですけど…。お父さんとも仲直りできて、今は田舎で暮らしているということですが、“良かったね?” と心から思います。だって今の岡崎くんの顔を見ると誰にでも分かりますもの…。
そうしているうちに、お姉ちゃんたちが来て、ことみさんや智代さんが来て(春原くんは当然のことながら、智代さんが来たときには驚いていましたけど…。サプライズ成功ってところでしょうか?)、いよいよパーティー開始と言うときに、汐ちゃんが辺りをきょろきょろ見渡して、
「ねえパパ、風子おねえちゃんは?」
と…。一瞬辺りがシ〜ンと静まり返ります。そう言えば風子さんが見えません。岡崎くんの顔を見ると血の気が引いたように真っ青になってました。忘れてたんでしょうね? 多分。汐ちゃんと風子さんはとても仲がいいのですが、岡崎くんの言うところによると、“汐をすぐに連れて帰ろうとするからな? あいつ…。渚は渚で俺の心を知ってか知らずかにこにこ微笑んでるだけだし…。誘拐だぞ? って言おうものなら、‘一時的な保護ですっ!!’ って言いながらグリグリした目で睨んでくるし…。ったく、高校時代と同じだな? あいつは…” とのことらしいです。私はそこまでは詳しくはないので、苦笑いしてましたけど…。でも忘れたんだったら電話をかければいいことですし、少しでもお友達は多いほうが嬉しいです。そう思ってそのことを言おうと岡崎くんのほうを見てみると…、
「何でパパは風子おねえちゃんのこと、いっつもいっつも忘れるの? ぶぅ〜」
「汐ちゃんの言う通りですぅ〜。朋也くん! 今から風子ちゃん迎えに行ってあげてくださいっ!! 電話のほうはわたしがしておきますっ!!」
汐ちゃんと渚さんに怒られていました。お姉ちゃんや智代さんも一緒になって怒ってます。かく言う私もちょびっとだけ怒ってますけど…。少なからず交流のある人とは一緒にお祝いしたいものなのに…。全く岡崎くんと来たら…。私を含む女性陣に睨まれて岡崎くんはたじたじ。勝平さんと春原くんと渚さんのお父さんは、“まあ、朋也くん(岡崎・小僧)のことだからねぇ〜(ねぇ〜?・なぁ〜)” と言ってため息をついてましたけど…。
「無限大最悪ですっ!! 岡崎さんは風子だけ呼ばないで委員長さんと委員長さんのお姉さんのパーティーをしようとしてましたっ!!」
「だーかーらー! 済まんかったって何度も何度も謝ってるだろ? おまけになけなしの金で杏と藤林のプレゼントを買わされるわ。お前のものまで買わされるわ…。こっちは小遣いがいくらあっても足りんわーいっ!!」
「自業自得だと思うの…。朋也くん」
ことみに言われる前に自分でも自業自得だとは思う。うん…。俺の知り合いの中で一番厄介なやつのことをすっかり忘れてしまっていた俺…。で、現在俺は、こうして歩く小型台風こと風子に睨まれているわけだ…。連れてくるときにもさんざん文句を言われたっていうのに、まだ足りないのか藤林たちに俺の文句を言っているわけで…。オッサンや春原のニヤニヤ笑いが無性に腹が立つわけだが、言うと女性陣から倍返し以上になって返ってくるのは必至な状況なので言うことも出来ず…って言うか汐も上目遣いにじ〜っと見遣っている。その顔は隣りの渚と、その隣りの早苗さんと同じ顔だ。誰も俺の味方をしてくれるものはいない。勝平でさえ、藤林の気迫に押されている。って言うか藤林…、いつからそんな風に凶暴な姉と同じようになってしまったんだ? 藤林のあまりの変化と女性陣の非難の目に思わず涙がちょちょ切れそうになった今日9月9日…。俺の高校時代のクラスメートと悪友の誕生日だ。
END