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ことみちゃん、嫌がらせをする?


「朋也くんがいけないの! 毎年私のお誕生日を忘れてるんだから…」
 と今年もぷく〜っと頬を膨らませて俺の彼女はウィスパー声でこう言う。今日5月13日は鬼…じゃなかった、まあある意味鬼みたいな感じなんだが、俺の彼女・一ノ瀬ことみの誕生日なんだが、ことみの言葉通り俺は彼女の誕生日をすっかり忘れていたわけだ。最近何だかそわそわしてるなぁ〜っと思って見ていたんだが、結局のところ今日のことが原因だったんだな? と思うこと然り。で、今平身低頭で床に頭をこすりつけて謝ってはいるんだが、素直そうに見えて結構なワガママな彼女はぷぅ〜っと頬を膨らませながらこんなことを言うとぷいっと首を横に向けてさらに頬を膨らませている。
 どこまで膨らむか一回試してみたいものだとは思うんだが、そんなことをしてことみを怒らせてしまえば人類が滅亡してしまうほどの災厄が現在進行形で進んでいるわけで。と言うのも隣りの隣りのお国から発生したウイルス性感染症が全世界に広がってそれの対策に世界の科学者たちが団結して対策を講じているわけだ。その中の1人に俺の彼女も含まれている。実際どんなことをやってるのかと言うことをこの前話してくれたのだが、まあ一般人の俺にはちんぷんかんぷんで分かりゃしない。得意げに話すことみに適当に相槌を打ちながら内心、“頭がパンクしてしまう〜っ!!” と思ったことはにこにこ顔で話すとてもことみにはとても言えん。
 とにかく俺がこうやって朝から謝っているにも関わらず、いまだに頬を膨らませてちょっと怒った顔?(と言うか小さな女の子がお兄ちゃんに遊んでもらえなくて駄々をこねてるような顔)をして俺のほうを上目遣いに見遣ってくるんだが、そんな顔をしたって全然怖さも何も感じないわけで。前述にも言ったが、ウイルス性感染症が広まっていて外へ出ることをことみから厳禁にされてしまっているので外へ出られない。じゃあ収入はどうしているのかと言うことだが、そこは大学の先生でワクチン研究の対価のあることみの収入があるので、現在は俺が養ってもらっていると言う感じになる。男としてはとてつもなく嫌な感覚なんだが、主夫業に徹する感じで俺が身の回りのことをやっているわけで…。まあ俺の会社(と言うか老人介護施設みたいな感じなのだが)のほうも4月から今月末まで政府の要請に基づいて休みになっているので解除になるだろう6月からまたバリバリ働こうと思い今は長い充電期間みたいな感じで過ごしている。
 そんなわけで、今現在はことみ先生の助手みたくオンラインであちこちと繋ぐ作業の手伝いなんぞをやっていたわけだが、そのことにかまけていてうっかり彼女の誕生日を忘れていた俺は今、こうやってことみにある意味嫌がらせのようにウィスパー声で文句を延々2時間くらいは聞かされているわけだ。ここで文句の1つでも言うと後が大変な事態になってくるのでじっと我慢するしかない。じゃあ何が大変なのかと言うことなんだが、俺の彼女はどこぞのド素人作家が書いたへんてこな小説まがいの自分の願望が載っているサイトが大のお気に入りのようで、そこに出てくる眼鏡女性のようにすぐに服を脱ぎ捨てて生まれたままの姿になって表へ出て行こうとするわけで。まあ家の中だったらまだしも、外はダメだろう外は! と思って出て行こうとする手を引っ掴んで連れ戻し、尻をぺしぺしやるのが日常茶飯事となっている。最初は、“痛いの朋也くん。もうしないから許してなの〜っ!!” と言っていたわけだが、どう言うわけかまたやってぺしぺし…、と続けていくうちにそれが快感になってしまったのか、ことあるごとに生まれたままの姿で出て行こうとすることが多くなってしまって非常に困っている。
 じゃあ一回本当に出してしまったら? とは思うんだが、世間の目と言うものがあるのでそう言うわけにもいかない。そういう事情が分かっているのかことみは前にも増してワガママになって俺にあれやこれや言ってくるわけで。しかし困った。マスクでもしてケーキでも買ってくるか? とは思うのだがこれがなかなかに難しい。まずマスクは必須アイテムで、していかないとことみに叱られてお仕置きにととんでもなく…な要求をしてくるわけで。この間も銭湯に行きたいとか言い出して、家に風呂があるだろ? とか何とか言うと、“じゃあ朋也くんは温泉に行っても内風呂にでも入ればいいの! 私は大きなお風呂でのんびりするから…” と言ってぷく〜っと頬を膨らませる。まあさっきにも言ったがこんなお子ちゃまに睨まれても何にも怖くはない。怖くはないんだが…、ばっと服を脱ぎ捨てて生まれたままのマスク姿と言う一種のマニアックな格好になって(ここまでになるのに1分もかからなかった。と言うか脱ぐたびに早くなっているような気がするのは気のせいだろうか…)、最早恒例となりつつあるように玄関をガチャッと開けようとする。その目にどれだけ困らされたか分かったもんじゃない俺はまた手を引っ掴んで奥まで連れて行き尻をぺんぺん叩くわけで。まあちょっとうちの彼女はMっ気があるのか、そうされるのを望んでやっている節も見え隠れしているので、一回放っておいたらどうだろうか? と言う考えが頭によぎる。まあ俺以外に見られることには多少なりとも羞恥心はあるようなので、今回はこれに賭けてみよう! そう思って、今回は何もしないことにしたわけだが…、


「ぐすっ、とってもとっても恥ずかしかったの。いつもみたいに朋也くんが追いかけてくるかなぁ〜って思ってたら全然追いかけてこないし、嫌がらせしようと思ってたら逆にされちゃった気分になっちゃったの…」
 いつものように正座に座らされて私はこう言ったの。目の前には勝ち誇ったような顔の朋也くんが椅子に座って私のお顔を見てる。ほんとはとってもとっても恥ずかしいことをやっていることは分かってるの。でも大好きな朋也くんにはお祝いしてほしくてそうやって気を引こうとしてたのにな? ちなみにケーキはあの後、朋也くんがコンビニに行って1000円くらいの豪華なケーキを買ってきてくれたんだけどね。
 でもほんとは恥ずかしいって言うことがばれちゃった。これじゃあ朋也くんが私にイジワルしてもお仕置きできないの。どうしようかな? なんて考えてる間に朋也くんってば勝手にろうそくに火を付けちゃって、“火をつけたから早く消せ!” なんて情緒も何もなく言ってくるの! 何だかむぅ〜ってなりつつもふぅ〜って火を消す私。“誕生日おめでとう、ことみ。じゃあ早速切って食べよう” なんてまた情緒の欠片もなくケーキを切ろうとする朋也くんに、待ってなのって制止するように手を持ってふるふるって首を横にぶんぶん振る私。
「こう言うのは情緒が大切なのに何で朋也くんはそう言う情緒も分からないでケーキを切ろうとするの? 私、もう少し情緒を味わいたいのに…。あっ、そうだ! 朋也くんのお膝の上に座りたいな…、って言うか私のお誕生日を忘れてた朋也くんはそれくらいされても文句は言えない立場だと思うの!!」
 こう言いながら朋也くんのお顔を上目遣いに見つめる私。“ひ、膝の上ってお前…” って言ってちょっと困惑気味な朋也くんの言うことも聞かずにえ〜いって無理矢理座っちゃう私。何だかとってもとってもいい気分。朋也くんは終始困惑してたけどね。“尻の感触が絶妙に心地いい…んじゃない! 重いんだけどな?” ってデリカシーも何もない言葉を発してくる朋也くん。その言葉にちょっとムッとなっちゃう…って初めのほうは何だかごにょごにょ言ってて聞こえなかったけど何を言ってたのかな? でも女の人に向かって“重い”なんて言ってくる朋也くんはやっぱり許せないの!!
 そう思って一旦立ち上がると今度はくるって向き直って座る私。突然私がそうしたのが動揺したのか朋也くんの胸の鼓動が早鐘を打つようにドクンドクン言ってるのが分かる。がばって抱きついてぎゅ〜ってやると、“ちょちょちょ、ちょっと待て〜。嫌がらせするにも程があるぞ〜っ!” って言うけど、こんなことを嫌がらせって言う朋也くんはどうかしてるって思ってそう言うと、“ま、まだそう言うことをするには早すぎるし、ことみの親御さんの墓にもお参りしないといけないからまだ駄目だ!” なんて常識ぶって言ってるけど、“朋也くんが隠れてえっちなご本とか読んでるの、私知ってるの!” って言うと、はっ! て驚いた顔になる朋也くんが何だか見ていて飽きないな、って思ったそんな今日5月13日、私の24歳のお誕生日だったの。うふふっ…。

END