サンタクロースの証明


 今日12月24日はイエス様のお誕生日でもあり、わたしのお誕生日でもあります。いつもはお父さんとお母さんとわたしの3人だけのお誕生日会を開いてきたのですが、今年はとても賑やかで楽しいお誕生日会が開けそうです。と言うのもわたしにも好きな人が出来て、お友達もいっぱい出来て…。病気がちで、なかなかお友達が出来なかったわたし。高校に入ってからも3年生をもう1回しないといけなくなりました。頑張ろう! そう思って登り始めたなだらかな高校の坂道も病気上がりのわたしにはきついものがあります。ふぅふぅと息をつきながら自問自答するように問いかけたその隣り、わたしの高校生活を変えてくれた大好きな彼と出会ったのです。
 と今朝考えていたことを思い出しながら学校からの帰り道、大好きな彼・朋也くんとお友達の春原くんたちと帰っている途中である話題が上がります。それは…、“サンタさんは本当にいるのか?” と言う話題です。朋也くんや春原くんは、“いるわけねーじゃん” と言う風な感じで全然サンタさんがいないような感じに言ってます。でも…、わたしは断言したいですっ!!
“サンタさんはいるとっ!!”
 実際に見たんですから間違いはないですっ!! 真っ赤な服に白いお髭、あれは間違いなくサンタさんですっ。いつもの帰り道でそう断言したわたし。はっと気がつくと朋也くんがはぁ〜っとため息をついて、こう言いました。
「あのなぁ〜。どうせオッサンがサンタの格好して出てきただけだろ? そんな夢みたいなことを言ってないで、現実を見てくれ! 渚〜っ!!」
「夢なんかじゃないですっ。ほんとに見たんですからっ! お父さんにも翌日聞いてみると“いや、知らねーぜ?” って言ってたんですっ!! ですからサンタさんは絶対いますっ!」
 まるでサンタさんがいないような口ぶりの朋也くんに、ぷぅ〜っと頬を膨らませて言うわたし。今夜はわたしの家でお友達を集めてクリスマスとわたしのお誕生日パーティーを開きます。朋也くんは一番に参加してくれるって言いました。そのときは嬉しかったのに…。そう思うと何だかとってもとっても悲しくなって来ました。涙が出そうになりましたがごしごし擦って何とか誤魔化しました。と、朋也くんが…。


「なあ、オッサン…。こんなので本当にバレないのか?」
「んんっ? てめぇは俺様の言うことが信じられねーのか? ってグダグダ文句を言う暇があったら体を動かせ、体を!!」
 ちっ、と舌を打つ俺。渚はちょっとと言うかかなり子供っぽい。でもそこが可愛いところでもある。現在24日午後11時、普通一般の高校生ならまだ起きている時間なのだが、ここ古河家では違うようで…。しかし今日の帰りしなは本当にびっくりした。19歳でまだサンタクロースの実在を信じてるやつがいるなんて思ってもいなかった。とオッサンが、
「サンタクローがいるかいないのかってそりゃ人の心だしよ。自由でいいんじゃねーか? だいたい思うか思わんかは個人の自由なんだしよ。それにいないよりいるほうがおもしれーじゃねーか? 小僧」
 そう言ってパンパンと肩を叩く。“まあそれはそうだけどなぁ〜” と言うと、“そう言うこった。ほれ、小僧。おめぇの分だ” と言って、“ちっ!” と舌を打つオッサン。と今まで黙っていた春原と勝平が声を揃えてこう言う。
「「ちょっと! 何で僕(ボク)も参加することになってるの? しかもこんな格好で?」」
「そりゃおめぇ…。サンタクロースにはトナカイがつきものだろう? いいからお前らは俺様とあっちだ」
 そう言うとオッサンは電気の煌々と点いた応接室に顎をやる。どうやら一階はまだ起きてるらしい。テレビの声もうるさいぐらいに聞こえてきている。杏の大笑いする声が廊下に立った俺たちの間をすり抜けていった。って言うかオッサン。どこから借りてきたんだ、こんな衣装…。と、そんなことはどうでもいい。春原と勝平とオッサンを階下に残して、俺は2階へと上がる。
 1階とは打って変わってし〜んと静かだ。階下からわいのわいのと楽しそうな声が聞こえている。多分春原と勝平とオッサンのコスプレ? に面白がってるんだろう。そう思いながらそ〜っと音を立てないように静かに歩いて、渚の部屋に到着する。と、ことみと風子も一緒だったんだっけ? とやけにバカでかい袋を肩から下ろす。何が入ってるんだぁ〜っと袋を開けて中を覗いてみて、“ああ、なるほどな?” と思った。とポケットに忍ばせておいた俺からのプレゼントを取り出して微笑み、もう一度ポケットの中に入れる。よいしょっと改めて袋を肩に担う。そ〜っと襖を開けて中へと入ると、仲良く3つの布団が並んで敷いてあった。まずは一番手前の風子から…。でっかいヒトデ型のクッションは公子さんが自前で作ったものだろう…。寝顔は判然とは分からないものの微笑んでいるに違いないと思う。“ヒトデパラダイスですぅ〜。ふふふふふっ” と言う寝言まで聞こえてくるからきっと夢でもヒトデと戯れているんだろう。本当にヒトデ好きだよな? こいつは…。でもこいつがいるせいなのかどうかは分からないが、味気なかった学校生活も楽しくなった。そう言った意味ではありがとうと言うべきだろう。そう思って、“ありがとうな? 風子…” そう心の中で言う。“岡崎さんがヒトデになりましたよ〜。うふふっ” とまた寝言が聞こえる。寝言でも怖いことを言うのな? お前…。というかなぜに俺がヒトデ? と心の中でツッコんでおいた。
 次はことみか…。テディーベアの可愛らしいぬいぐるみがあったのでこれだろうと枕元に置いてやった。ことみには最近世話になりっぱなしだった…。俺と春原、バカ二人の勉強をよく見てくれたもんな? おかげでこの間の期末テストはいい点が取れたよ。春原も、“うっほー、岡崎! 僕もやれば出来るんだね?” って言いながら狂喜乱舞してたもんな? 本当にありがとうな? ことみ…。そう思って一番端の俺の最愛の彼女のところまでいく。
 すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえてくる。袋を開けてだんご大家族のクッションを置いた。とても頑張り屋で心根はすごく優しい。そんなところが好きになった。高校生活、灰色だった俺の心をカラフルな色に染めてくれた。親父とも仲直りさせてくれた。他にも感謝してもし尽くせないことはいっぱいある。普段照れくさくて言えないがここでは敢えて言わせてもらおう。そう思いやや小さい声でこういった。
「サンタクロース、やっぱりいるんだな? ちゃんといるんだ。目に見えなくても心の中にいるんだ…。俺、初めて知ったよ。渚…。いつもありがとう…。それとこれ、俺からの誕生日プレゼントだ。サンタクロースに頼んで一緒に持ってきてもらったぜ…」
 そう言って小さな箱をだんご大家族のクッションの横に置いた。と3人の寝顔を見る。とても幸せそうな寝顔だ。思わずにっこり微笑んでしまう。そろそろ潮時か…。そう思って、“3人とも、いい夢見ろよ…” 部屋の襖をそっと閉めた。階下に降りる。オッサンが仁王立ちに立っていた。


「な、なんだよ? オッサン」
「うまくいったみたいだな? 小僧」
 そう言うとガキがイタズラを成功させたみたいな笑顔になるオッサン。って俺も同じか…。オッサン同様にニヤニヤ笑ってるんだから…。そう思っていると、“大宇宙銀河と勝平が女連中と一緒にお待ちかねだぜ?” そう言って応接室の襖を親指でくいくいっとしている。相変わらずわいわいがやがやと楽しい声が聞こえてくる。“体もちょうど冷えてきたところだし、オッサンも一緒に来るか?” と言うと、
「お、おう…、って! 当たり前だっ!! 誰の家だと思ってやがる! ここは俺様の家だ!! このすっとこどっこい野郎!!」
 怒鳴られた……。そのあとで杏や智代から渚の部屋でのことを一部始終聞かれて、またオッサンの逆鱗に触れたことは言うまでもない。早苗さんはいつも通りのにこにこ顔で俺たちのことを見ている。ふと壁掛け時計を見た。今日が昨日に変わる…。そんな時間。天井を見つめて改めて心の中で言った。“渚…。誕生日おめでとう” と…。

END