平平コンビ誕生!!
今日9月9日は僕の嫁の杏と、柊ちゃんの嫁で杏の双子の妹である椋の誕生日だ。子供も出来てそれ相応に仕事なんかもして、結構いい身分なんだけど、問題が一つある。まあそれは後でおいおい話すこととして、今は柊ちゃんと一緒にプレゼントなんかを買いに来て選んでいる最中なんだけどさ。
「ねえ、秋、じゃなかった春原クン、これなんかどうかな? 椋さんにぴったりだと思うんだけど…」
もう5年もそこら経つんだからいい加減名前も覚えてほしいところなんだけど、柊ちゃんはいつも僕の名前を間違える。まあいつも間違えられるんでもう諦めてるんだけどさ。一旦ついてしまった習慣とかはなかなか消えないし、もし消えたとして今更僕の名前を間違えずに呼ぶ柊ちゃんって言うのもちょっとおかしいかな? なんて思うわけで…。“うん、なかなかいいんじゃないかな? 椋も喜ぶと思うよ?” と男2人、ファンシーな小物ショップの前でこうやってるって言うのも何だかおかしいわけで…。さて僕はどうしようかなぁ〜なんて考えて、ネックレスに手が伸びる。ちょうどこの前ネックレスがなくなった〜っとか言って家中探し回ってたっけ? で見つかったんだけど、へしゃげて使い物にならなくなってたんだ。これを買って帰ったらどんな顔をするか楽しみだなぁ〜。そう思いつつそのネックレスを購入。
まあお代のほうは僕の1ヶ月の小遣いの約3分の2ほど飛んだけどね? でも僕自身あまり使わないからそんなにお金に苦労するって言うことはないんだけどさ。まあさして言うなら岡崎んちみたいにちょっと足りないときにそっと入れておいてくれるような気遣いがあればなぁ〜なんて思うわけで…。まあそんなことは滅多にないから別にこれと言って困るようなことはないんだけどさ…。
しかし…。このまま渡すって言うのも何だか味気ないよなぁ〜なんて考えていると、携帯がぶるぶる言い出す。取り出して名前のところを見てみると岡崎からだ。何だろう。そう思いまだ選んでいる柊ちゃんを尻目に通話ボタンを押した。
「よう、春原。杏の尻に敷かれてるか?」
そんなジョークも何回も聞いているのでもう慣れっこになって、“敷かれっぱなしでひぃひぃ言ってるよ?” と言う僕。受話器の向こうで笑い声が聞こえる。実際は僕のところは意外と亭主関白なのか高校時代みたいなことはない。と言うか杏があんなに尽くしてくれるいい嫁さんだったとは思いもよらなかった。高校時代の女番長と言う感じは今は一切なくて、高校時代を知っているやつが見たらきっとびっくりするんじゃないかな? と思う。“それよか、何で電話してきたのさ?” と聞くところが、いつもの如くパーティーをするから来いと言う内容だった。パーティー会場はまあいつも通りの岡崎の嫁さんの渚ちゃんの実家である古河パンだそうだ。パーティーの企画を考えたのは渚ちゃんか汐ちゃん辺りかなぁ〜っと思って、分かった旨を伝えると“じゃあ夜にな” と電話は切れそうになるんだけど、“あっと、もう一つ言い忘れてたことがあった” と岡崎は重要そうなことを言う態勢に入ったのか、“あのな…” と言う。その時には柊ちゃんも戻ってきたのか僕の携帯に耳を当てて一緒に聞いている。
「オッサンからの注文で何か芸を見せなくちゃならなくなったんだ…。今回は杏と椋の誕生日だから2人は除外なんだと…。俺としてはお前と杏のコントじみた漫才でも見たかったんだが…。まあそう言うことだからそのつもりで用意しておいてくれ。あっ、勝平もそこにいるんだろ? 勝平もそのつもりで頑張ってくれ…」
そう言うと電話は切れる。切れる瞬間、柊ちゃんが“ちょちょちょ、ちょっと待ってよーっ!! ボクの了解は〜っ?” とか言ってたけど後の祭り状態。まああのオッサンの命令だからか、断るととんでもなくヤバい状態になるのは分かってるし、杏は多分楽しみに待ってるか、知らずにサプライズって言うこともありうるわけで…。もっとも後者のほうがこの場合、確率的には高いんだろうなぁ〜っと思う。椋も同じようなものなんじゃないかな? と思って未だに諦めきれずにぶつぶつ呟いている柊ちゃんの肩をポンポンと叩くと、“諦めて今からネタでも考えよう?” と言う僕にとほほ…となりながらもうんと頷く柊ちゃんがいたんだけど…。
わ〜っと言う歓声と拍手が鳴り響くここ古河パンの奥座敷の一室。ボクにとっては初めての舞台と言うか漫才と言うかそういうものだったわけだけど、何とかうまく出来たみたいだ。まあこれもボクの隣りでにこっと笑ってる春原クンのおかげかな? と思うわけで。朋也クンも言ってたけど、普段おちゃらけてるけどやるときはやるんだねぇ〜って妙に春原クンのことをリスペクトしちゃった。ちなみに、春原クンのお嫁さんでボクの義理のお姉さんにあたる杏さんは、甥っ子の翔平クンと純平クンと一緒に“あはははははは” と大笑いをしているわけで…。まあ漫才のほうは即興で考えたんだけど、それがえらくウケたわけで…。と言うかボクは普段通り話していて春原クンがそんなボクの言動にツッコむっていう形だったわけだけどこれが結構うまくいったってわけ。って言うかボクって普段からそんなボケボケしてたの? って朋也クンに聞くところが、
「ああ、まあ勝平はそんなところかな? でもそれが勝平のいいところなのかも知れないけどな…」
って言われてしまう。って最後の方か聞こえにくかったんだけどなんて言ったのかな? ふと、椋さんのほうを見るとにこっとまるで天使がそこにいるかのように微笑んでいた。その膝の上にはボクと椋さんの愛の結晶、萌香ちゃんがばぶばぶ言いながら嬉しそうに手足をばたつかせている。それを見てちょっと恥ずかしかったけどやってよかったなぁ〜っと思い、春原クンには感謝しなくちゃね? とも思った今日9月9日、ボクたち2人の愛する人の誕生日だ。
END