潜在的ヌーディスト?


「さあ朋也くん、食べてなの…」
 と俺の前、自分の体の上に乗せた刺身を箸で摘まむと俺の口に持ってこようとする彼女がいる。今日5月13日はある意味鬼のような性格のボケボケした彼女・一ノ瀬ことみの誕生日なわけだが…。何がどうしてこうなった? と言わざるを得ない状況が今、広がっている。ことみは今は大学の教授で日本の最高学府である東京大学で物理学を教えている。何でも超弦理論とか言う一般人からしたらてんで訳の分からんようなことを教えている。まあ俺の薄っぺらい脳では皆目見当もつかないようなことをやっているわけだ。そんなえらく難しいことをやっている子が、家の中じゃあ自然に帰ると言うか、今からの時期から9月下旬くらいまではほぼ何もつけてないいわゆる・裸族になる。
 こんな格好は他所様には見せられないくらいな格好で、“怖い夢見ちゃったから一緒に寝てほしいの…” とか、“寂しくなっちゃったから抱っこしてほしいの…” とか、癒し声で言ってくるわけで…。なら断ればいいだけじゃないかと言うことだが、断ると素直なようで実はすごい(俺に対してだけ)いけずな性分の彼女なものだから後で泣きを見るのは俺な感じだ。ついこの間もこの一見何を考えてるのか分からん彼女から、“一緒にお風呂に入って流し合いっこしよう?” なんてお誘いを受けたのだが、いくら彼氏彼女の間柄であっても自重しないといけないところは自重しないといけないので丁重にお断りしたら、次の日の朝、やけに体のあちこちがぽにゅぽにゅしてるなぁ〜っと思ってついと布団を持ち上げると、生まれたままの姿の彼女が抱き着いて寝ていた。叱ると、“分かったの!! 朋也くんが私をそんなに邪険に扱うならこのままの格好で出て行ってやりますなのっ!!” と言って何もつけてない姿に靴だけ履いて〜な感じの一種のマニアックな格好で表へ出ようとするわけで。とかく俺の彼女には羞恥心と言うものが欠如しているように思う。
 で今だ。ご丁寧に自分の体に刺身やらナマコの酢漬けやらなんかをわざわざ乗せて俺に食べさせようとしていることみ。一体この天才の頭の中はどうなっているのか一度調べてみたいもんだな? と思う。まあ中身が俺たち一般人とは違うことはこの上ない事実なわけなのだが、この一見無害そうなぽよっとした顔の裏はどんな感じなんだ? と思う。と、とにかくこの異常な光景は何とかして辞めさせねばと考えて、“食べ物を粗末にしたらダメだろ” と言うものの、“朋也くんが食べてくれればいいだけのことなの…。ついでに私にも食べさせてほしいな?” なんてこんなところで常識的な模範解答をしてくる。あれやこれや問答を繰り返しているうちに俺の腹が無情にもぐ〜っと鳴る。その音を聞いたことみが、勝ち誇ったような顔で、“ほら、朋也くんが嫌がってもお腹は正直なの。だから、食・べ・て、なの…” と体ごとこっちに寄ってくる。〇〇と天才は紙一重とは言うが俺の彼女はピッタリその言葉が当てはまるのな? なんて考えながら盛大にいつもの如く鼻血をぶちまけて意識の闇へと堕ちていく俺がいたのだった。


 今日は私のお誕生日。今年で24歳になるんだけど、朋也くんってば、未だに私を子ども扱いしてきて本当にむぅ〜ってなっちゃうの! だから今年は朋也くんが隠し持ってる秘蔵のえっちなご本に載っていた、“女体盛り” をやってみたんだけど…。全然食べてくれないし、逆に怒られちゃってとってもとっても損した気分になっちゃう。当の朋也くんはぶはってお鼻からいっぱい血を垂れ流して倒れちゃっていくら呼んでもお返事してくれないものだからそのままこの“女体盛り” は終わりになっちゃったわけだけど…。お片づけを済ませた後、寝ている朋也くんの頭をお膝の上に乗せてお顔を見てみるとまだ鼻血の跡が残ってた。きれいに拭いたつもりだったんだけどな? そう思ってウェットティッシュを取って朋也くんのお顔のそばまで持ってこようとしてると?


「ぶぅ〜、今日は私のお誕生日なのになんでこんなに怒られちゃってるの? 朋也くんには私を大人な女性として見てほしいだけなのに〜…」
 と俺の彼女は口を尖らせてそんなことを言う。が言わせてほしい。何もつけてない生まれたままの姿で普通は介護せんだろうと…。気が付いてふっと上を見たら巨大なお餅が2つ並んでいるんだからなぁ〜。またさっきみたいに意識の闇へと堕ちていくところだった。まあ今回は何とか踏みとどまったわけだが…。とにかく裸族禁止な? と言うと、うううっと悲しそうな瞳で俺のほうを見つめてくることみ。まるで捨てられた子犬が道行く人を見つめてるようなそんな目で見つめてくるわけだ…、が! そうやって何度同じ目に遭ってきたことかっ!! とばかりに怖い顔をして睨み返してやる。ちなみに今は俺のお古のシャツにパンツと言う格好なわけだが、ぷぅ〜っと頬を膨らませたかと思ったら、いきなりえいっと脱ぎ出すことみ。生まれたままの姿になるとそのまま玄関のほうまで駆けて行って、“元々人間はヌーディストが普通なの!! だから私はこれからお外でもヌーディストのままでいるの!!” と言って出て行こうとする。ま、待て待て! とばかりに飛び掛かりむにゅっと柔らかいものを掴んでしまうのだが、そのことに気が付くのは騒ぎが収まってそう言えばと思いだすころだったわけで…。あっちやこっちやむにょんとかぷちゅっとか効果音も少々ヤバめな感じにはなってきているのだが、そんな悠長なことは言ってられんわけなので、とにかく嫌がることみを無理矢理に奥へと連れ戻して尻を出させてぺしぺし叩く俺がいたわけだが…。どう言うわけか彼女にとってはそれが快感だったらしく、事あるごとに裸族になって表へ出て行こうとすることが多くなったここ数日。変な方向に進み出した今年の5月13日・俺の同棲中な彼女、一ノ瀬ことみの24歳の誕生日である。ぐふっ…。

END