栞ちゃん、頑張る
今日2月1日は、私のこと美坂栞のお誕生日です。去年は私の好きな人、祐一さんに見事に忘れられて悔しい思いをしました。しかも、二股を掛けられて…。私も被害者でしたが二股を掛けられた相手、舞お姉さんも被害者のようで。
でもあの後、私と舞お姉さんはすごく仲良しになりました。今ではお姉ちゃんがもう一人出来たみたいな感覚です。そう言えば、この間は舞お姉さんの誕生日だったんですね。祐一さんにいっぱい甘えたんでしょうか。誕生日の2日前、私がお姉ちゃんとスーパーに行った帰りに、どことなしか嬉しそうな舞お姉さんを見かけました。声をかける間もなく足早に去っていきましたけど。
あれは祐一さんに思いっきり甘えてたに違いないです! 女の子の直感で分かりました! 私も負けていられません。舞お姉さんはとても優しいお姉さんですけど、私の大好きな人は渡せません。そう言えば、お姉ちゃんも祐一さんのことが好きみたいなことを言ってましたね。
こ、この二人には絶対負けられない。そう思った私は、あくる日学校のお友達に最近のおしゃれ事情やメイクアップの方法などを聞き、家に帰って早速今年貰ったお年玉を持ち出して、可愛い洋服とお化粧品を買い、さらには美容院に行って、髪を整えてもらいました。
夜、買ってきた洋服を着て、ふふふ〜ん、と鼻歌などを歌いながらお母さんの鏡の前でポーズなどを取っていると…、
「可愛いわぁ〜。やっぱりあたしの妹ね? これでもう少し胸があったら言うことないんだけど…」
お姉ちゃんが部屋の入り口に立っていました。お、お姉ちゃん? いつからそこにいたんですか? って今さりげなーく酷いことを言っていたように思うんですけど。私は病気だったんですよ? お姉ちゃんみたいに健康だったら私だって、ナイスバディーになれてたかもしれないのに…。う〜っ。そんなこと言うお姉ちゃん嫌いですっ!!
でも、これから頑張れば私もお姉ちゃんや舞お姉さんみたいになれるかもしれない。いいえ、絶対なって見せる。そう思って、ぷぅ〜っと頬を膨らませてお姉ちゃんを半眼で睨んでいた私は、ふふふっと笑みを零します。お姉ちゃんは?
「し、し、栞〜! 謝るから! あたしが悪かったから! だから怒らないで〜!」
「怒ってません! 何でみんな、私がふふふと笑うと怒ってるように見えるんですか? 酷いです」
そ、それは…。とお姉ちゃん。祐一さんもそうですが、皆さん私がふふふと笑うと謝ってきます。そんなに怖いんでしょうかね? この“ふふふ”は。疑問に思った私はお姉ちゃんに聞いてみることにしました。すると?
「そりゃあ、怖いわよ。栞のその“ふふふ”は…。この前だってお弁当のことでちょっと相沢君に文句を言われて、“ふふふ”って笑った後、“お兄ちゃんが栞のお弁当を残すぅ〜!!” って涙をいっぱい目に溜めて言ってたそうじゃないのよ? それにあたしも被害だいぶ受けたし」
あ、あれは…。あれは祐一さんが悪いんですよ? 私が真心を込めて作ったお弁当を“栞、もうちょっと砂糖を控えてくれないか? 甘すぎてこれじゃあちょっと、なぁ?”なんて言った挙句に残そうとしたんですからね? 刺激物は体によくないってことは、どこの雑誌でも書いてあるじゃないですか。私は祐一さんの健康のためを思ってやってあげてるって言うのに…。
だいたい祐一さんはいつもいつもいつも…。と、文句をぶつぶつ言う私。ふとお姉ちゃんのほうを見ると、微笑ましそうに私を見つめていました。
で、今日、2月1日。誕生日当日…。祐一さんが、映画に誘ってくれました。見たい見たと言っていた甘いロマンス物です。早速学校から帰ると私は昨日買った服を着て薄くお化粧をします。初めてお化粧をしたときは酷い有様で、祐一さんに笑われて、悔しい思いをしましたが今はもう大丈夫です。お姉ちゃんや学校のお友達なんかにお化粧の仕方を教わりましたからね? 身支度を整えます。出る前にお母さんの部屋の鏡で再度チェック。うん。完璧。にっこり微笑みました。
時計を見ると、待ち合わせに5分ほど遅れちゃってます。でも、許してくださいね? 祐一さん。そう思いながら歩を進めました。駅前の大時計の前で私の大好きな人が待っている姿が見えます。私は手を振りながら駆け出します。私の一番大好きな人の元へと…。
END