かおりんの話
は〜い、美坂香里よ。
最近、巷であたしのことを、人間兵器だの、バーサーカーだのって噂をしてるけど、あたしはいたって普通の女子高生なの…。
そりゃあ、握力が200くらい?あるとか、鉄パイプでちょうちょ結びが出来たりとか、あと…、護身用にメリケンサックとか、ヌンチャクとかは持ってたりするけどさ…。それにしたって人間兵器はちょっと言いすぎだとは思わない? ねえ?
「何を独り言ぶちぶち言ってんだ? コルァ!!」
ここは商店街の大通りから一歩入った路地…。そこであたしは今、栞と同い年くらいの子達に絡まれてる。あたしが、この子達に絡まれてたうちの高校1年生くらいの女の子を助けたとかで、因縁をつけられたから…。こんな路地裏に、女の子1人相手に10人がかり…。
まぁ、ご苦労なこと…。呆れちゃうわね…、全く…。溜め息を吐きつつ、あたしはこう言ってやったわ…。
「はぁ〜、あんたたち。いつまでそうやってるつもり? そろそろ進路のことも考えなくっちゃダメね…。だいたいあんたたち、将来のこと、何か考えているの?」
って…。そしたらこの子達、あたしを憎憎しそうに睨んでた…。その子達のボスみたいな一人の子が…、
「何だぁ? こいつ…。ちょっと頭が良さそうだからって、偉そうなことずけずけ言いやがって! もう許さねぇ! やっちまえ!! みんな!!」
って言ってきたの…。あたしは相手の顔を見る。案の定というか、何というか、やっぱり目を血走らせてあたしを睨んでたわ…。はぁ〜。困ったわねぇ〜。あたしは頭を抱え込む。根っからの不良なんていない。あたしはそう思ってる。
この子達もいいところを探せばたくさんあるのにね…。ふぅ……。でもまあ、売られたケンカは買わなくちゃ…。だって、戦うことが楽しいんだもの! あっ、今思ったんだけど…。こういうところが“人間兵器”って言われる所以なのかしら?…(汗)。
本当はメリケンサックとかを着けるんだけど…。まあいいわ…。そう思いあたしは素手で戦うことにしたの…。あたしが本気でやったら、二、三ヶ月は病院にいなきゃいけないわけだし…。そうなったらこの子達が可哀想だしね? それにあたしが卒業して、栞にとばっちりが来るのも嫌だし…。
まあ、あの子のほうがあたしより怖いんだけどね…。何か訳の分らない変な薬品を常備携帯してるんだから…。あたしは、薬でも塗っときゃ治るけど…。栞はちょっと洒落になんないわね…。
こないだチラッと例の“四次元ポケット”を見たんだけど…。シアン化カリウム(青酸カリ)だの、ヒ素だのって物騒なモノが書かれたビンが見えたような…(汗)。ま、まあ可愛い妹を殺人者にしたくないもの…。
「まあ、いいわ…。どこからでもかかっていらっしゃい…。お姉さんが教えてあ・げ・る(はぁと)」
最後の言葉は、ちょっとしたジョークよ……。あたしはそう言って構えを取る。かといって相手は10人。さすがに厳しいわね。あっ、ちょうどいいわ…。この間体得した技でも使ってみましょうか? ふふっ…。
「あたしのこの手が光って唸る!! あんたを倒せと輝き叫ぶ!!……」
10分後…。不良グループたちはうんうん唸ってダウンしていた。あたしは言ったわ…。
「分かったでしょ? あんたたちのやってることは所詮お遊びだってこと…。これに懲りてまじめに勉強することね。……あっ、分らないところがあったら教えてあげるわよ…。どうせ暇だしね。ふふっ…」
って…。この子達は自分を落ちこぼれだって勝手に決めつけてるだけ…。本当は出来る子達なんだから…。あたしはそう思う…。世間ではどうのこうの言うけどね…。でもそれは、世間が言うこと…。あたしはあたしよ。ふふっ…。
で、現在……。
「だぁ〜。分かんねぇ〜!! 香里さん。教えてくださいっすよ〜!!」
「あんた……。ここはこうやって、こういう風に解くの。分かった?」
元不良学生10人に、勉強を教えているあたしがいるのでした。そんなある早春の昼下がりだったわ……。
おわり