まいちゃんの話
こんにちは……、川澄舞……。
風邪……、引いた……。頭、ふらふらする……。体の節々が痛い。熱もさっき計った。38.6度…。かなりつらい…。昨日の夜…、お風呂が熱くって…。でも祐一から…、
「風呂ってのはな、熱いほうがいいんだっ!!」
って言われて…、熱いの我慢して入ってた。お風呂から上がって、あまりに熱かったから、しばらく裸でいた…。そしたら…、風邪、引いた……。ぐしゅぐしゅ…。
「悪かったよ、舞。ちょうど、明日は土曜日だろ? だから明日の昼、佐祐理さんとお見舞いに行くからさ……」
私は大学生になった。私が通った高校の近くにある大学だ。だから私と佐祐理は昼休みはいつも祐一のところへ行く…。私が学校に行かなかった日の夜…、祐一から電話がかかってきた。
多分、私が昼休みにいつもの場所にいないのに気付いて佐祐理にでも聞いたんだろう。
「うん……」
私はそう言った。次の日の昼、私が一人、部屋で寝ているとピンポーンと玄関のチャイムがなった。鍵が開く音が聞こえる。多分佐祐理が合鍵を使って入ってきたんだろう。佐祐理に合鍵を渡しておいて正解だった…。しばらくして、佐祐理と祐一が私の部屋に入ってきた……。
「ごめんな…。舞。俺、自分が温湯だからさ…。本当にごめん…」
祐一は頭を下げる。私はふるふると首を横に振った。佐祐理が私の顔を覗き込んで…、
「大丈夫? 舞? ……ご飯はちゃんと食べたの? もしまだだったら、佐祐理が何か作ろうか?」
「うん……」
「あははー。じゃあ、佐祐理が栄養のつくものをいっぱい作りますねー。う〜ん、ハンバーグなんてどうでしょうか?…。祐一さん? それともすき焼きとかは? ねえ、舞? 舞はどっちがいいと思う?」
佐祐理は笑ってそう言う。祐一はちょっと呆れた顔で…、
「佐祐理さん? 舞は病気なんですから、そんなにいっぱいは食べられませんよ?…。ここは消化にいい、お粥とかの方がいいんじゃないかなぁ? それか玉子酒とか…」
「ふぇ? 玉子酒? 玉子酒って何ですか? 佐祐理、そんなお酒、聞いたことありませんよ? ねえ、舞?…。舞は聞いたことある?」
私も聞いたことがない…。だから私もぶんぶんと首を横に振った。そしたら祐一は……、
「えっ? 佐祐理さん、知らないんですか? へぇ〜、佐祐理さんにも知らない料理があるなんてねぇ…」
「うふふっ…。祐一さん? 佐祐理はどこにでもいる普通の女の子なんですよ〜?」
佐祐理は微笑みながらそんなことを言った。ふと、祐一が何かを思いついたように…、
「あっ、そうだ! もしよかったら、今から玉子酒の作り方を教えましょうか? なあ、舞。ちょっとの間だけ辛抱しててくれるか? 10分ぐらいで出来るからさ…」
「うん……、少し横になる……」
私はそう言うと横になる…。祐一と佐祐理は奥の台所に行ってしまった……。横になってしばらくすると、話し声が聞こえてくる……。
「祐一さん、玉子はどうするんですかー?」
「玉子はよくかき混ぜてください。あっ、そうです。その調子……」
「……」
「あははー。祐一さん、お上手ですねー。佐祐理もお粥を作りますねー?」
「うん、そうしてくれると助かるよ。あっ、熱いから気を付けてくださいね?」
「……」
何だか、私だけ部屋に一人ぼっち…。祐一と佐祐理は台所で楽しそうにお喋りしてるのに…。そう思うと…、ぐしゅぐしゅ……。寂しくて…、泣いていた……。
「何も泣かなくてもいいだろ? 舞……。はぁ〜」
「ぐしゅぐしゅ……。寂しかった……」
私の頭を撫でながら、少し呆れたように言う祐一。佐祐理は、祐一の横で泣いている私を見て、優しく微笑んでいる。そんな、ある冬の終わりの昼下がりだった……。
おわり