美人外国人さんがやってきた その1
戦争が生んだ出会いと日常の中の非日常
ぽかぽか陽気に誘われてふらっと出かけたくなる今日この頃、そんな今日この頃ではあるのだが、俺の周りでは妹軍団と姉2人組の血で血を洗う抗争? が続いている。昨日も胸やら尻などを俺の目の前に持ってきては誘惑してくる始末だった。最近じゃあそんな光景が当たり前になってきてるので驚くこともなく、悟りを開いた仏陀のような感じになってきている俺自身が恐ろしい感じがするのだが…。妹軍団の軍団長ともいうべきか、そんな感じの従妹・楓佳は昨年の突然の上京からこっち1年が経った。最近じゃあ標準語も覚えたらしく階下の奥さん連中と話すときは標準語で話している。まあもっとも九州訛りのほうはそうそうには消えんわけだが、その辺は目を瞑ろう。奥さん連中もその辺は分かってるのか変なイントネーションでも聞き流してくれているわけで。まあここにも慣れてきている証拠なのかもしれないな。そう思う。妹軍団の軍師的な存在である後輩で俺の天敵・お局様の妹である薫ちゃんは何を考えているのか全くもって分からない。この間も俺と妹軍団との密接な関係を築こうとあれやこれや画策していたわけだが、姉2人組に見透かされて計画が露呈、阻止されてちょっと残念そうにしているのが印象的だった。マスコット的な存在であるマセガキこと、美羽はと言うと俺の膝の上が自分の居場所だ〜っというばかりに尻をめり込みさせつつ仇敵という存在である、お局様のほうをぐぐぐ〜っと上目遣いに睨んで? いるわけで。まあそれは現代科学では否定されている“魔法”という事象で大きくなった身体でも関係なくずしっとした形のいい桃のような尻を俺の膝の上にめり込ませてチビの時と同じようにぐぐぐ〜っと睨んでいるわけだ。その情景があまりにおかしかったのでついつい笑ってしまいぷんすか怒ったマセガキ(大)に今度おいしいケーキ屋に妹軍団3人をエスコートすることを約束させられた。もちろんその代金は俺の金であることは言うまでもない。
そんな俺たちをにこにこ顔で見つめる裕香姉と仏頂面で見ているお局様の2人組は俺の天敵だ。当然ながらこの2人を相手に戦って勝てた試しはなし。俺の中では最強で最悪な2人組だと思う。まあ裕香姉は従姉で昔からの縁もあってか、それほど怖さは感じない(というか甘えん坊の極み…と、これが怖さなのか?)のだが、お局様は空恐ろしい感じがする。この間もいつもの場末の酒場でおやっさんと2人で飲んでると、がらがらがらっと戸が開く音がする。開いたほうを見ればいつものぐるぐる牛乳瓶眼鏡のお局様が入ってきて、“またここで飲んでたのね? まったく…。今日はあたしがお世話する日なんだから帰るわよ?” と言ってむにゅっと俺の腕にウォーターメロン級はあろうかと思われるモノを押し付けてくる。まあ俺の世話を日替わりで世話することになってるんでその日になったのかと思うのだが、最初はぶつぶつ文句を言ってた割にはよく面倒を見てくれるのでこっちとしてはまあ有り難い。まあ文句を言うなら服を着てくれということだけだ。いつも俺の家に来てはすぐ裸族になるもんで目の行き場がなくなる。“嫌だわ〜。また新しい下着買わなくちゃ…” とブラジャーを外そうとしてるんだろうかそんな声が聞こえてきてはむにっと背中にマシュマロみたいな柔らかい感触が当たる。まあまあこんなことを男にしてくるんだからこの人はとんでもね〜人だと思うわけだ。まあ飯は美味いしさばさばした性格も俺としては嫌いではない…と言うか好きな部類なのだが、如何せん親父臭いこの性格が邪魔をして、俺の恋愛対象からは外れているわけで。この親父臭さだけがなくなればそれこそ嫁の行き場も引く手数多にあるだろうに…。と思うのだが昔のことを知っている俺には何も言えん。これはお局様本人で解決できないとだめだろう。そう思う。まあ俺に出来るのは今のこの状況を受け止めることだろう。そう思った。
そんな感じで日々この一筋縄ではいかない女性陣を相手に暮らしている俺。まあボンキュッボンな体の裸族の集団が部屋の中をうろうろ徘徊しても最近じゃあ何も感じなくなってしまっている。しかし、むっちりした胸や尻なんぞを腕や背中やお腹に押し付けられると、思わずうひっとなってしまうのは相も変わらず。そんな俺の行動が面白いのかどうかは分からんが女性陣が暇さえあればのスキンシップが激しい。この間もマセガキと風呂に入ってるとどこで見つけてきたのか従姉妹連合とお局様姉妹が入ってきたわけで。そのせいでいつものウ○トラマンのカラータイマーみたくピコピコとマセガキの体が光りだしてボンキュッボンな体になりやがる。狭い浴室内にむちっとした裸体が4人も入ってくるもんだから、狭いわ息苦しいわで大変だったんだが、でかくなったマセガキは俺の体にむぎゅ〜っと自分の豊満な体を押し付けながら、“お兄ちゃんとあたしの愛の巣に入ってこないでよ〜。まあ薫さんと楓佳さんはいいにしても、恵さんと裕香さんはお兄ちゃんをすぐ誘惑しようとするんだから〜っ!!” とはちきれんばかりに頬をぷぅ〜っと膨らませてお局様のほうを見ながら言う。まあ昨年楓佳が九州から越してきてから、“‘俺’監視同盟” なる怪しい同盟を作って監視しているわけで。俺がちょっとでもお局様や裕香姉と話をしているとすすす〜っと寄ってきてがばっと寄りかかってきたり、背中にジャンプしてぽにゅっと柔らかい感触もそのままにぎゅ〜っと抱きついてきたりしてくる。それだけならまあ百歩譲っていいとしよう。そうはいかんのが俺の周りなわけで。ぷく〜っとこれでもかと言うくらいに頬を膨らませて、“あんちゃんのあほ〜!!” だの、“お兄ちゃんのバカ〜!!” だの、“お兄さんのえっち(はあと)” だのと罵詈雑言? を言われる。と言うか薫ちゃんは何を言ってるんだ? と妹軍団の最年長のお局様と同じような童顔を見遣る。うふふふふふっと何かを企むような美羽が衛星放送で見ているどこぞのアニメのいたずらっ娘か思い込みの激しい女子高生っぽい顔をして俺の間抜け面を見遣っている薫ちゃんに底知れない恐怖を感じている今日この頃である。
とまあこんな日々を毎日毎日続けているわけだが、桜も満開から散り際になっている今日この頃。お局様の発案でお花見を催すことになった。昨年、一昨年とコ○ナの影響からなるべく外出を避けていたわけだが、今年はようやく青空の下で花見が出来ることになった。まあ少数でしかもソーシャルディスタンスを取ってとの政府からの要請と言うことなので、そんなに派手にどんちゃん騒ぎは出来ないわけだがな? まあ大々的に出来なかった美羽のエレメンタリースクール入学祝いと、楓佳の大学入学祝いをここでやってしまおうということらしい。俺は詳しくは聞かされていないんだが秋田美人姉妹と従姉の計画に誘われて乗ったと言う形でそう言う運びになった。
そう言うことで俺は所謂場所取りと言うことで朝の6時くらいに美羽に叩き起こされて、近所のちょっと広めの公園にやってきている。まあ朝も早よから場所取りなんてと思いきや、あっちやこっちで場所を取ってるやつを多く見かけた。“あ〜あ〜、朝も早よからご苦労様なこった…って俺もか…” と心の中で深いため息をつきつつシートを敷く。これから何時間くらい待つことになるのやら。とりあえずここに来る途中でコンビニに寄ってサンドイッチとカフェオレを買ってきた。まあ朝飯と言うわけだ。それを一つ取って食うことにする。…と、向こうのほうでフードを被った小汚ない格好な17〜18歳くらいの女がこっちをじ〜っと見つめているのが分かった。な、何だ? と思い見返してやる。なおもじ〜っと見つめてくる女。ひょっとしてこれが欲しいのか? と思いサンドイッチを手に取ってぐるぐる回してやると、女もサンドイッチを目でぐるぐる追っている。それが面白いので何分か(実際には30秒か1分くらい)回していると目を回したのか、“きゅ〜っ” と言って倒れやがった。ほかのやつらがこっちのほうを一斉に見遣ってくる。ははは、はぁ〜。と盛大なため息を1つ。なんでこうも俺の周りには女関係の難が多いのか…。と思いつつ、倒れた女のほうに向かった。よっと負ぶって自分のほうへ連れてくる。負ぶったときに分かったんだが、こいつも胸がでかいなと思った。お局様級か、それ以上かと言うくらいはあるだろう。まま、ここで救護してても仕方がないので、早いところ俺のところへ連れて行こうと思い愛想笑いをしつつ連れていく。
そんなこんなで、見知らぬ女を連れてきてしまった俺。何か身分証明書みたいなものはと探すが、当然のことながらない。これでお局様や美羽たちが来ちまったら俺はそれこそ未成年者略取誘拐で警察にお縄だ。そう思うと早いことこの女に目を覚まさせてもらわにゃならんわけで。ぺちぺち頬を軽く叩いたりなんかするんだが、“んう〜っ” と言うばかりで一向に起きる気配がない。…にしても肌が白いなぁ〜、もしかして外国人か? と思いながらフード越しの顔を拝みながら腹ごしらえ用のサンドイッチに手を付けようとして…。ビカッと女の目が開く。“я голодний(ヤ、ホロドゥリィ)”と言うロシア語みたいな言葉を喋りながら、むくっと起き上がる。髪の色をよくよく見てみるとサラサラな輝くほどの金髪だ。目の色は当然のことながら透き通った碧い目。ここにきて外国人かと思うと少々驚いてしまう。そんな俺の行動をどう見ていたのかはわからんが女はじ〜っと俺のサンドイッチを見つめている。ほ、欲しいのか? と思い徐に持っていたサンドイッチを差し出すと、おずおずと手を出してきて、さっとかすめ取るように取って貪るようにがっつく。よほど腹が減っていたんだろう見る見る間にサンドイッチは女の腹に収まってしまった。“ゴ、ゴチソウサマデシタ” といかにも外国人らしいたどたどしい日本語で手を組んで言う女。“Дякую(ヂャックーユ).…デハナカッタデスネ? “アリガトウ”デシタ” そういうとにっこり微笑む女。目の前の碧い目が俺の顔を上目遣いに少々嬉しそうに見遣っている。相手の少々話をしたいわけだがしたくても英語ではないなと思う。ロシア語か? と思い携帯にあるゴオゴレ翻訳でロシア語で、“どういたしまして” という言葉を翻訳して見せると、露骨に嫌な顔をして、 “ウクライナ!!” と言う女。ああ、先々月くらいか戦争で攻められた国だよなぁ〜。ひょっとして避難民か? そう思い翻訳でウクライナ語で変換して見せると、こくこくと首を縦に振る。へぇ〜、こんな身近にウクライナからの避難民がいるなんてなぁ〜っと思っていろいろと聞いてみた。まず名前はスカフディア・アンナスカヤと言う名前で、19歳らしい。幼げに見えたのは彼女が外国人らしからぬ小柄な身長なのかもしれない(とは言え俺の隣人共に比べればでかいんだけどな?)。キーウ(キエフ)出身でもともとは日本語学科の学生だったこと。遠い親戚が日本にいたので戦争開始から間もなく日本に避難してきたんだが、その親戚は交通事故で先月…、と言うある意味お局様と同じかそれより酷い境遇な感じがした。住むところも初めは親戚の家に居候していたのだが、親戚が亡くなったことでアパートの大家から立ち退きを迫られ、そこから少ないお金で転々としていて、昨日そのお金も尽きてしまったと言うことをたどたどしい日本語と身振り手振りと翻訳で教えてくれた。
俺もリアルタイムでネットやらテレビやらでその情勢は知っているし、ロシアの暴挙にはつくづく腹が立っているのだが実際に避難してきた人を見て、とてつもなく悲しい気分になってくる。と言うかよくこんな辺境の地までやってきたなぁ〜と思うと是が非でも援助したいと考えるのは日本人の心意気なんじゃないか? と思う。裕香姉か楓佳のところで厄介になってみたらどうだろうか? なんていう考えも思いつくんだが…。まま裕香姉はいいとして楓佳は超の付くほどの人見知りだから絶対に首を縦に振らんことは分かっている。さてどうするかなぁ〜? なんて首を捻っているともにゅっとした感触が背中に当たった。な、何だぁ〜っと思って当たった感触のほうを見ると、いつも通りの面々がぐぐっと目を光らせて俺を睨んでいる楓佳と美羽のお子ちゃま2人組に、良からぬことを企んでいるかのようににんまりしている薫ちゃんの妹軍団。はたまたいつものようにため息を吐きつつ呆れ顔で見つめているぐるぐる牛乳瓶眼鏡のお局様と、純粋に微笑んでいる裕香姉の姉コンビと言ういつもの5人衆が勢揃いしていた。まあそれぞれ違った顔をしていつもの女衆が俺のほうを見るのは面白いわけだが…。とにかくもこの状況はヤバすぎる。と、攻撃態勢に入ったのか、楓佳がぎろりとこっちを睨んで博多弁も丸出しにこんなことを言ってくる。“あんちゃん、そん女ん子ば誰? って言うか金髪ん外国人の女ん子ば?! しかもなに? うちよりでかか胸?! もう! あんちゃんなうちんもんなんに〜っ!! 何でいっつも浮気ばっかりするんよ〜っ!!” と言うとぎゅむっとした感触が背中から腕に来る。顔を見るとぷく〜っと頬を膨らませたいつも俺を恐怖させる顔だ。美羽は美羽で、“お兄ちゃんはまた新しい女の人を〜っ!! 将来のお嫁さんのこのあたしを差し置いて〜っ!! むぅ〜っ! 絶対絶対許さないんだから〜っ!!” と言って俺の背中にぴょ〜んと飛んできてぽかぽか背中や頭を叩いてくる。“まあ! あんたに外国人の女の人を口説けるセンスがあったなんてねぇ〜” とこう言うのは俺の天敵のお局様。“で、先輩? どこで知り合ったんです? こんな可愛い外国人の女の人なんですからそうそう訳アリなんですよね?” とやけに冷静なツッコミをしてくる薫ちゃんはさすがお局様の妹だと思った。って言うか訳アリって何だ? そんな俺たちを、“ええ雰囲気やんか。賢くん” とにこにこ顔で見つめる裕香姉はさすがだと感服すらする。
とりあえず、アンナを座らせて、事の顛末を話す俺。聞いてた5人は話が終わると何も言わずにぎゅっとアンナを抱きしめる。最初は訳が分からないような顔をしていたアンナだったが、意味が分かったんだろう。つぅ〜っと頬に涙が通っていた。それからしばらく静かに泣くアンナをみんなで肩をぽんぽんと叩いたり頭を優しく撫でたり、翻訳ツールで、“大丈夫だよ” とウクライナ語で書いて見せたりして、慰める。まあ祖国の惨状はあまりに酷い。無事に帰られるかどうかも分からない。帰られたとして親兄弟散り散りにされている可能性だってある。かの侵略国の大統領にはそれ相応の報いを受けてもらわんと…、と言う気持ちが強くなる。と、とりあえず今日の寝床を確保せねば話は始まらんよな? と思い、年も同い年くらいな楓佳に今夜の宿を頼む。うんと大きく頷くと、“あんちゃんが言う前に、うちはもうアンナちゃんと一緒にいようって決めちょったもん!” とアンナ以外では一番の巨乳な楓佳が胸を張って言う。“ワタシ、イッショニトメテクレマスカ?” と俺たちの話を聞いていたアンナがたどたどしい日本語で話に加わる。ウクライナ語で、そのことを伝えると、ぱぁ〜っと華が咲いたような顔になって“Дякую(ヂャックーユ)” と言う。まあ日本人としては当たり前な行動だろうが外国人には珍しいことなんだろうな? と“Дякую(ヂャックーユ)” を言いまくるアンナを見ながらそう思った。
さて、花見は後日改めてすることにして、今日はアンナの生活用品の買い出しと避難民保護の手続き等に分かれて行動を起こす俺たち。とは言え国際法上の保護云々なんて言うものはこれっきりまるで分らん俺なのでそこはお局様と薫ちゃん姉妹と裕香姉にお願いすることにした。まあ対価は1週間キャビア食べ放題と1日デート権とお世話稼業1週間で手を打つことになったわけだが、薫ちゃんの謙虚さと裕香姉の甘えん坊はどこにいても変わらんな? と思う。薫ちゃんはもっと欲を出してもいいのにな…と思うが相手が俺じゃあなぁ〜っと妙に納得してしまった。それに引き換えお局様や裕香姉のお姉さん組は本当に容赦がねーのな? まあ百歩譲ってお局様は良しとしよう。問題なのは俺の従姉なわけで。って言うか風呂も一緒か? …まああの裕香姉だ。当然のことながら一緒なんだろうなぁ〜っと思うと憂鬱な気分になる。ここで嫌だと突っぱねてもいいんだが、そうすると余計に甘えてきて大変だ。それに楓佳や美羽に伝わってそれが薫ちゃんやお局様に広がって最後はひっちゃかめっちゃかになることは容易に想像できる。何でこうも俺の周りにゃこう一癖も二癖も強いやつばかり集まるんだ? と思ってアンナだけはこの癖の強いやつらに感化されんようにせねばならんなと心に誓う俺。とりあえずはアンナの買い出しだな? 。昨日は隣りの隣りから楓佳のあれやこれや言う声が大声で聞こえてたが、大丈夫だろうな? また何か良からぬこと(俺たちの関係性云々)を見知ったばかりで訳も分からんアンナに吹聴してるんじゃないだろうな? と少々不安になる俺。美羽はまだすかぴゅ〜っと寝ている。そろそろ起こしたほうがいいだろう。そう思い寝室のほうへ行く。襖を開けて中を覗くと案の定まだ夢の中だ。“お〜い、朝だぞ〜。そろそろ起きろ〜” と声をかけると眠そうな目をごしごし擦りながら、“ふぁあああ〜。お兄ちゃ〜ん、おはよ〜” と言う。我が家の朝はいつもこんな感じだ。そこから朝飯を食う。まあうちは美羽の健康も兼ねて朝はご飯系が多いのだが隣りはどうだろうか? なんて考えてると向かいの席から足を蹴っているのかゲシゲシと俺の膝に当たる。ふっと向かいを見ると、むぅ〜っとむくれた顔の美羽がこっちを見つめていた。
「美羽が一番なのに何でお兄ちゃんはアンナちゃんに必死なの? そりゃあ戦争してるウクライナから逃げてきてるって言うことは分かるけど…」
とぷぅ〜っと頬を膨らませてこんなことを言う。国際情勢なんかも通信教育で習っているんだろう。俺より詳しい部分もあったりして昨今のアメリカの初等教育はかなりハイレベルだなと思わされることも多々ある。日本じゃまずこんなことは教えんし、俺が小学生の頃はせいぜい小学校高学年になってからだった。株式なんてそれこそ高校に入ってようやく習うところなのに、もう習っている。アメリカ恐るべきと言うところだろうか。と怒ってぷぅ〜っと頬を膨らませながらもぐもぐ食べる美羽を見て怒るか食べるかどっちかにしてくれ、と思う俺がいたのだった。
さて朝飯を食べ終わり出かける準備をしてドアに鍵をかけていると、“あんちゃん、今ちょうど行こうと思っちょったとに…” と背後から残念そうな声がする。振り返ると上目遣いに俺を見遣る楓佳とアンナがいるわけで。“オハヨウゴザイマス…。ケンイチロウ” とちょっと控えめに挨拶するアンナに心が踊る俺。碧い目が俺の間抜け面を見つめてにこっとひまわりのような笑顔を見せてくれる。こう言うタイプは初めてなものなのでちょっとどぎまぎしてしまう俺。そんな俺の腕にむぎゅっと自分の胸を押し付けてくる従妹。ああ、絶対心の声が表に出てしまったんだろうなぁ〜。むむむむむぅ〜っと言う声を発しながら上目遣いに睨んでくる楓佳と背中に飛び乗ってぽかぽか背中を叩く美羽。はぁ〜っと今日初めてのため息が出る。ぶりぶり怒る2人組とその光景を不思議そうに、でもちょっと羨ましそうに見つめる外国人1人。その対比と言うか光景が日常の中の非日常と言う感じで面白いと思った。買い物に行く途中でも話題に上がるのはロシア・ウクライナ情勢だ。最近のロシアの蛮行にはつくづく腹が立つ。…のだがアンナはなぜか悲しそうに送られてくる映像を楓佳のスマホから見つめている。“ロシアが憎いんじゃないのか? 何で悲しそうな顔をするんだ?” と訊くと、“戦争をしているのはロシアの政権の人。国民は騙されてるだけ” と言う至極真っ当な答えが返ってくる。これだけ自国民の何の罪もない人が亡くなっているのに、こんな年端もいかない19歳の女の子はここまで考えてるのか…。そう思うとちょっと恥ずかしい気持ちになってくる。と同時にウクライナと言う国のことをもっと聞いてみたい気がした。
アウトレットに来る途中でいろいろとウクライナについて訊いてみた。まず言語だが公用語はウクライナ語だが、ロシア語でも通じるらしい。無理にウクライナ語で話しているのはウクライナに誇りを持っているからだと言うことらしかった。料理もいろいろあるらしく、その中で驚いたのがボルシチだ。てっきりロシア料理だと思っていたんだが発祥はウクライナだということを教えてもらった。あとIT産業が盛んでアンナも大学ではIT工学を学んでいたということだそうだ。とそんな話をしながらアウトレットに着く。アンナは目を丸くして見ていた。手を取り中へ入る。生活用品は様々だ。食器もあれば服もある。当然のことながら下着もあるわけで、男が一番入りたくない領域なんだが無理矢理に楓佳と美羽に引っ張られて連れて来さされた。まあ子供用のショーツは美羽と来た時には毎回買っているので今回もその方向へ…と足を向けようとしてガシッと腕を掴まれる。掴まれた先を見ると案の定楓佳と意外なことにアンナだった。“日本の下着のサイズとかの意味が分からない。フウカに聞いてもいい。けれどやっぱりケンイチロウの意見も聞きたい” と携帯の翻訳アプリにそう書き込んでポッと顔を赤らめる仕草がなんとも初々しく感じるわけだ。しょうがねえ、乗りかかった舟だ。と思ってしぶしぶ了承する俺。その一連の行動を見ていた楓佳が何か良からぬことを思いついたかのように、にゅふふふと怪しく笑っている。楓佳は何を考えてるんだ? と少々恐怖を覚える俺。って美羽は? と探すと、おもちゃ屋の前でじ〜っとゲームを見ている。まあ後で中古のゲームソフトでも買ってやるかと思いながら美羽の見える位置にある試着室の前にやってくる。選んでる姿を後ろ目に見つつ、お局様たちは今頃大変だろうなぁ〜なんて考える。しかしどうやっ手続きをするのか、俺には点で分からん。結局のところお局様たちに任せるしかないのか…。そう思ってると選んだのか2人が試着室に入っていくところだった。“待っちょってね。あんちゃん” とやけに嬉しそうに微笑みながら試着室に入る楓佳に空恐ろしいものを感じるんだが、まあアンナもいるので無茶なことはせんだろうと思っていたのが間違いだったわけだ。むさくるしい男が待つ中、下着を試着する2人の女。こう言う時の歯止め役の薫ちゃんはお局様たちと一緒にアンナの避難民関係の諸々の話をしに行っているためおらず…。俺1人で本当に止められるのか? と大いに不安になるのだが…。ものの見事にその予感は的中してしまうわけで…。
カーテン越しに、“あんちゃん、もうよかよ〜” と言う楓佳の声とともにバッとカーテンが開かれる。その中を見て思わず鼻血が噴出しそうになる俺。だってそこには…、ほとんど紐な感じの下着を着た2人が立っていたからだ。まあ楓佳はポーズを取っていかにもな格好をしているのだが、恥ずかしそうに試着室の隅で手を胸と大事なところを隠すようにしているアンナが居たたまれなく思いさっと目をそらした。“何でもっと見てくれんと? しぇっかく愛らしか下着ば着たとに…” そう言ってポーズを取りまくる楓佳。“Це соромно(ツェ・ソーロンモ)” と言って恥ずかしそうにするアンナ。“こ、こらーっ!! 楓佳!! アンナを巻き込むんじゃねー!!” そう言ってバッと目をそらす俺。ったく、楓佳は〜っ! と言うかこれが美羽にどんな悪影響を及ぼすか分かったもんじゃねえ。とりあえず服を着ろ〜っ!! と言う俺に、“別によかやなか。減るもんやなし…。て言うよりあんちゃんがうちんこと子ども扱いするとが悪かっちゃけんねっ!” と俺の顔を逆にぐぐぐぐぐ〜っと睨む楓佳。埒が明かん…と言うよりこの状況はヤバすぎる。俺が変質者みたいと言うか変質者そのものじゃねーかと0.01秒で判断して、さっとカーテンを閉じて、“と、とりあえず服を着ろ、服を!!” と言う俺。“ちぇっ、せっかくあんちゃんにうちの体ば見しちぇ、悩殺してやろうて思うとったとに…” ととんでもねーことを言い出す始末。って美羽はと見るといつの間にか俺のそばまでやって来て黙ってぷぅ〜っと頬をこれでもかって言うくらいに膨らませて上目遣いに睨んでいた。“美羽だって大きくなったら楓佳お姉ちゃんやアンナお姉ちゃんくらいおっぱい大きくなるんだからっ!!” とあながち間違いではないことを言って更に頬を膨らませる始末で。ははは、これで確実に諭吉さんが1枚飛んでいくなぁ〜っと心の中は大雨状態な俺だった。
アンナの日用品も買い、家に帰るころにはズタボロ状態だった俺。あの後もいろいろと大変だったわけだが一番大変だったのはアンナがラブホ○ルを西洋の城だと勘違いして入ろうとしたことだろう。とにかく初めての外国人、しかも日本に来るのが初めてなアンナにとっては見るものすべてが新鮮なものだったことだっただろうと思う。いや、向こうでも写真や動画では見たことだろうが実際に見るのとでは訳が違うなと思った。まあその辺はおいおい案内してやろうと考え、とりあえずシャワーでも浴びるか…と風呂場に行く俺。美羽は疲れたんだろう帰ってくる途中でもう舟を漕いでいた。まあ1日くらいは入らなくても問題はないだろうと言う判断をして俺だけ入ることにする。お局様たちは避難民の在留許可申請が長引くみたいなことをメールで送られてきて電話をしたら、“今日は帰れないみたいよ? 全くお役所仕事には勘弁願いたいわ…” なんて言う愚痴を聞かされて、“それよりあんた! アンナちゃんや楓佳ちゃんたちにいらないことしてるんじゃないでしょうね?! あたしがいないからって羽目を外しちゃダメなんだかんね?” と実に疑い深い声でそう言われる。ええい。こっちはその被害者なんだ! と声を大にして言いたかったんだが、言ったところで100倍か1000倍になって返ってくることは非を見るより明らかなものなのでその言葉は涙と共に飲み込んだ。しっかしどこもお役所仕事は適当と言うか何と言うか…、こう肝心な時に役に立たんもんだよな? そう思いながら服を脱ぎ脱衣籠に入れる。とここで気付くべきだった。女物のパジャマとパンツが2つあることに…。そんなこととは露知らず、風呂のドアをガチャッと開ける俺。どたぷ〜んと最近またでかくなったロードカップの胸と推定マーキュリーカップはあろうかと思われる胸がぶるんぶるん揺れている光景を目の当たりにする。と言うか何で俺の部屋の風呂にいるんだ? 楓佳…と、アンナも…。
「ハダカノツキアイダイジッテ、フウカニナライマシタ。ダカラワタシモケンイチロウトモットナカヨクナリタイトオモッテ…。ソレニニホンノコトワザニモアリマシタ、“ゴウニイッテハゴウニシタガエ” ッテ…」
と少々頬が上気してるんだろう、頬を赤らめてこう言うアンナ。“まあそう言うことやけんあんちゃんも一緒に入ろ? あっ、体ば今日頑張ってくれたお礼にうちとアンナちゃんとで洗うちゃるけんね?” と言って、手をわきわきさせながら迫ってくる楓佳。“だーかーらー! 何でお前がここにいるんだ? いつの間に入ってきた? って言うか服を着ろ服を! 着る暇がなかったらタオルでも巻いてくれーっ!” と俺はずりずり後退しながら叫ぶように言う。そこでふっとアンナの肢体を見て、ぶっと吹き出しそうになるのをすんでのところで耐えた。こいつもかよ…。とあるべきところにないモノが見えるわけで。まあ揃いも揃って美羽と同じようにつるんとしていたんだが…。ボンキュッボンなのは服の上から見ても分かっているので、そんなものだろうと思っていたわけだが、実際にちらっと見た限りではものすごいものがあるよな? マーキュリー級は…。いやロード級も日本人からするとものすごいわけだが…。ずりずり後退する俺。なおもわきわき手を動かしながら近づく楓佳。その後ろを何か面白いものでも見つけたかのようにぶるんぶるんとものすごいモノを揺らしながら近づくアンナ。やがて端まで追いつめられる。勝ち誇った顔の楓佳が、“ふふふっ…。あんちゃん…、もう逃げられんばい。観念してうちとアンナちゃんと一緒にお風呂に入るっちゃけんねっ! しゃあこっちば来るんたいっ!!” と言ってガシッと自分の柔らかいところに俺の腕を態とに絡めて風呂場のほうへ連行させられる。アンナも気が付いたのか空いている腕にぶるんぶるんなモノを押し付けてくる。その2つの大きな桃かスイカのような圧力に耐えかねられず俺が覚えているのはここまでだった。と言うより気が付いたら、パジャマを着せられていて両方にお餅みたいな柔らかいものを押し付けられて寝かされてそれを上から横から恨めしそうに目が4対、俺の間の抜けた顔を呆れたように見つめる目や、嬉しそうに見つめる目、怒ったように逆半月系の目で睨む目やら、面白いことを予感してほくそ笑む目、そんな目たちがじ〜っと俺の顔を見つめていた。あっ、俺、死んだな? と思う1日経った朝の7時半、そんな時間だ。
昨夜はぽにゅぽにゅした弾力のあるモノを腕や体に押し付けられて気絶して気が付いたら朝だった俺。当然のことながら眠くて欠伸が何回も出るわけで…。しかしながらそんな寝不足の俺を寝かせてはくれない事情があるわけだ。実のところあれからお局様たちに叩き起こされて、一人一人尋問と言うかそういうことを受けたわけだが、どう言うわけか俺はがっちり柱に括り付けられているわけで…。お局様曰く、“あんたが途中で逃げ出さないためよ? 何か文句でもあるの?” とぐるぐる牛乳瓶眼鏡をまるでどこぞの小賢しい悪者がするようにくいっと持ち上げてそんなことを言う。“お兄ちゃんは〜。美羽が寝ているときにそんなエッチなことをするなんて〜” といつもより早く起きてきて例の現場を目撃した美羽は大層ご立腹な様子でぷく〜っと突いたらそれこそ割れるんじゃないだろうかと言うくらいに頬を膨らませて俺の顔を涙目の上目遣いに睨んでいるわけだ。“先輩も隅に置けないですね〜? でどうでした? アンナさんは?” とマーキュリーカップの触り心地を訊いてくる薫ちゃんだが目は真剣そのもの。そんな俺がやり込められている中でも、“さあこれから忙しなるなぁ〜? まずはアンナちゃんが誰と住むかやけどなぁ〜” と裕香姉だけはいつも通りの様子にこの従姉には絶対逆らえんことをつくづく思い知らされるそんな桜も満開な春の日常のちょっぴり非日常な日である。
END
おまけ
そう言えばアンナの難民申請の件について話すのを忘れていたんだが、日本に来た時にすでに政府から難民と言うお墨付きを得ていたらしい。政府の人も保護者の人が亡くなった後、探し回っていたんだということだ。だから最初に退去を迫ったアパートの大屋は何か罰を受けるということ(おそらく罰金か懲役かそこら辺か何かだろうな? 国際法はてんで分からん俺だが…)らしい。まあアンナも晴れて日本を堂々と歩けるって言うもんだ。それだけでも嬉しい。まあ戦争が終わっていつもの平和が訪れるまではこの日本で安全に暮らしていければいいかな? と思う。今度の休み…って明日か、寺か神社にでも連れて行ってやるかな? それか、浅草の下町か…。さすがに京都とかには遠くて行けないが、まあ日本観光でも連れて行ってやればいい休暇か気休め?(が果たして良い表現になるのかどうかは分からんが…)にはなるんじゃないか? と思う。とりあえず明日だな? そう思い出先から家へと帰るのだが…。
玄関の前で何だか嫌〜な感じがする。そうそれは第6感に近い感覚で…。開けるのは嫌だったが開けないと家に帰れんわけなので徐にカギを取り出して開けて中に入る俺。そこに広がっていた光景に、またかと言う感じもしてきた。要はいつも通り裸族になったやつらがうろうろ俺の家を徘徊していたわけで。一つ二つ驚いたんだが、美羽が俺がいないのに大人な体になっていたことと、あんなに恥ずかしがっていたアンナが堂々と一糸纏わぬ姿で料理をしていたことだ。って言うか美羽、何でそんな大人な体になれたんだ? ってこの状況にアンナは驚かなかったのか? と訊くと、“さあ、アンナさんはふーんってな顔で見てたけど? あたしのこの魅惑のボディーはお兄ちゃんへの愛がそうしたんじゃないのかな? お兄ちゃんったらあたしが子供なのをいいことにアンナさんとべったりくっついちゃって!! 将来のお嫁さんはこのあたしなのに〜っ!!” とぐぐぐぐっと上目遣いにぷぅ〜っと頬をこれでもかっと言うくらいに膨らましつつ睨んできて、“そんなお兄ちゃんにはこうだっ!” とばかりに飛びついて俺の背中に思いっきり自分の胸を押し付けてくる。もにゅっとした感触が背中いっぱいに広がって来てぼっと顔が赤くなる。そんな俺を心配したのかアンナがマーキュリー級のモノをゆっさゆっさ揺らしながら、“ドウシタノデスカ? ケンイチロウ” とやってくる。見ると別段普通の顔。携帯の翻訳機能で、“驚かないの? 美羽が突然大きくなって?” とウクライナ語に変換してそう訊くと、“日本人だったらそう言うこともあるだろうって思ってました” と今度は日本語に訳されて返ってくる。どう言う偏見だ! と言うか日本のアニメの影響か? アニメ恐るべし…。と思う俺。と何か面白いモノでも見つけたように楓佳もつられてやって来ては、“あんちゃん、早う上がりんしゃい。しぇっかくアンナちゃんば作ったボルシチが冷めてまうけんね” と俺をどうどう奥の部屋へ。その後はいつもの如くここは昔のアフリカの原住民か何かかと思わせるような裸族の集団に取り囲まれて、腕や体や足や顔に柔らかいものをむぎゅっと押し付けられて当然のことながらその圧迫感に耐えきれるわけもなく、ごふぁ〜っと盛大な鼻血をまき散らし、意識の闇へ堕ちていく俺がいた。そのときに思ったことは、“ウクライナ人、侮り難し…” だったことは言うまでもない。ぐふっ…。
TRUE END